第10話 GS特訓!
「そんなこともできるのか、普通にすごくね?」
「確かにこのスキルは強いけど、色々と制約も多いんだよね。1番の制約はステータスを持つものは分解できないし、創り出すこともできない。だから、生物はもちろん、魔法や私のスキル以外の効果がかかっているものも分解できない」
「それでも十分強すぎると思うんだけど・・・」
亮太の言う通りめちゃくちゃ便利だけどね! と仁王立ちしながら返事をしてくれるリコリス。いや、もう便利とかいう次元じゃないと思うよ。コンビニも顔真っ青になっちゃうくらいだよ。
「で、亮太の作った石は相当強力なことがわかったけど、どうするの? これだけだと戦えなくない? あ、これ魔石ね」
「ありがとう。そうだな、スライム倒すのに15分かかる俺から言わせてもらえば、その通りだな」
たぶんカッコつけてる場合じゃないと、真顔でリコリスは言ってきた。いや、本当に手段がない。これならまだエクスプロージョン! とか言ってた方がかっこいい分いい気がする。俺石投げるだけだからカッコつけるも何もないからな。
「あと2つも慎重に使わないとね」
「そうだな」
さて、何をすべきかと俺が頭の中で考えていると、ギュルルルという音が聞こえてきた。これは、あれですね。いわゆるテンプレの1つであるあの!
「亮太お腹空いたの?」
「うん」
このテンプレは俺も知らない。そもそも自分の空腹に気づかない俺はやばいと思う。ま、まぁそんなことは置いといて、俺は登録本からお弁当を取り出した。
「お昼食べようか、お弁当1つしかないけど大丈夫?」
「私は自分の分があるから大丈夫」
リコリスも俺と同じように虚無からお弁当を取り出した。丁寧にバスケットごと出現したところをみるに、何か収納系のスキルでもあるのだろうか? 俺の登録本みたいな。
「お腹空いてるんでしょ? 早く食べちゃおう」
そういうとリコリスは素早く椅子と机を出して、そのまま椅子に座った。俺の分の椅子も出してくれたので、俺もそこに座る。
「「いただきます」」
2人仲良く食べ物への感謝をしてからお弁当を食べ始める。俺の方はまさかのカレーライスだった。ものすごいものをお弁当にする宿屋である。リコリスの方は色とりどりの具材がたっぷり挟まったサイドウィッチのようだ。
「あ、美味い」
「(じーーー)」
俺がスプーンを使って美味しそうにカレーライスを食べていると、物欲しそうにリコリスがじーっと見てきた。
「1口食べるか?」
「食べるー!」
待ってましたと言わんばかりの勢いでリコリスは返事をすると、スプーンを出現させて、カレーライスを食べた。
「美味い! 亮太もこのサンドウィッチ食べてみてよ、私のお手製だぞ!」
「じゃあ1つ頂こうかな・・・美味しいな」
「美味しいなら良かった」
こうして俺とリコリスは草原の真っ只中で楽しく食事をしたのだった(自己ナレ(ry)
☆★☆
「ご飯も食べてお腹も膨れたことだし、戦闘に戻ろうか」
「じゃあ椅子と机片付けちゃうねー」
リコリスはそういうと椅子と机をあっという間に光のようなものに分解してしまった。その光はリコリスの手に集まって吸収されていく。
「やっぱり便利だな、それ」
「さっきから私のスキル見る度にそれしか言ってないね」
多少呆れ顔で言ってくるリコリスに対して、何度見ても便利だとしか思えないから仕方がない。と返すと、そうですか。とこれまたさっきよりも呆れた顔で言ってきた。
「そんなことより、実験に続きをやるんでしょ? 次は何やるの?」
「それがな、あと2つ残ってはいるけど、特にもう試したいことは無いんだよな」
そう、もうやりたいことはなくなってしまったのだ。強い相手に使いたいとも思ったが、そもそもレベルが低くて当たらない可能性とかもありそうなので、レベリングかなと思っていると、リコリスもそう思っていたらしく、こう提案してきた。
「じゃあスライム相手に戦闘訓練でもする? やっぱり石しか攻撃手段がないのは厳しいと思うよ」
「それもそうか、じゃあ付き合ってくれるか?」
「もちろん!」
とてもありがたいことにリコリスは元気よく了承してくれた。このあとからは同じような作業の繰り返しだった。まずは索敵を行ってモンスターを見つける。今回は基本大人しいグリーンスライムのみを狩ることにした。
たまにゴブリンの集団や、ウェアウルフなどの有名雑魚が出てきたりもしたが、今回はスルー。グリーンスライムのみを夕方まで狩り続けた。
「これでラストー!」
ザシュッという音とともにグリーンスライムが爆ぜる。
「今のはかなりの好記録だったんじゃないか?」
「3分くらいかな、凄いよ! 1日でここまで上達するとは思わなかったよ、私は遠距離攻撃ばっかりだからあまり教えてあげられなかったのに」
「いや、リコリスがいてくれて助かったよ。あまり教えてあげられなかったのにって言ってるけど、そのアドバイスのおかげで上達した部分もあるんだし、見守っててくれてありがとう」
どうもーとニコニコしながら言うリコリス。俺も俺で1日で15分から3分にまで縮められたのは素直に嬉しかった。それに、俺にはまだ武器とか防具強化という
「そういえば、スライムまぁまぁ倒したんだし、亮太のレベル上がってるんじゃない?」
「そういえば、確認するか!」
心の中でステータスと唱えると、例の白いウィンドウのようなものが出てくる。
名前 高橋 亮太
職業 強化使い
種族 人間
ランク 1
ランクボーナス なし
魔法 なし
スキル 強化(通常強化、登録本、熟練強
化)
異世界対応
称号 強化使い 異世界人
ステータス
Lv 3
HP 298/331
MP 112/112
SP 103/555
ATK 114
DEF 115
AGL 113
INT 114
EXP10 NEXT50
お金 2703200G
レベルがいつの間にか3に上がってる、やったー!(喜び) スキルも1つ増えてるし、やはりレベリングは正義。さて、スキルの詳細は
熟練強化
装備品に熟練度の概念を追加する。熟練度はそれらの装備品を使えば使うほど増えていき、その熟練度に応じて、ステータスの強化、スキルの追加を行えるようにする。また、熟練度を消費して様々なことを行えるようにする。
なるほど、熟練度システムか。愛着の湧いた自分の武器が強くなっていくのは嬉しいな。まだ、自分だけの武器! みたいなものはまだ手に入ってないし、手に入る気配もないけども。
「ステータスどんな感じだった?」
「スキルが1個増えてた、あとは全体的にまちまちって感じ」
「良かったじゃん! どんな感じのスキル?」
「まだなんともって感じのスキルだな」
じゃあまた実験しないとね! と楽しげなリコリス。俺の予想だけど、この熟練強化は最初の方ではあまり役に立たない気がする。ただ、あとの方になってくるとかなり強力になってくる系のスキルだと思っている。
「そろそろ帰ろうか、あとのことについては歩きながら話そー」
「確かに、もう夕方だしな。少し急ごうか」
「そうだね」
俺たちは夕焼けを背に街道を少し話をしながら、気持ち早めに歩いて行く。
「次はいつ会おうか」
「明日は?」
「明日は別の用事があるから厳しいな。明後日なら大丈夫だけど」
「じゃあ明後日の午前8時には冒険者ギルドに集合ってことでどう?」
「わかった、明後日の8時ね」
次の冒険の予定がトントン拍子に組まれていく。俺はこの世界に来て一応国を救うという大義はあるものの、具体的に何をすればいいかが分からないので、基本暇だからここまで早く了承できた訳だが。
こんな感じで色んな話をしながら歩いていくと、前の方から馬車に乗ったおじさんがこっちに進んできた。
「こんにちは」
「「こんにちはー」」
その行商人と思われるおじさんがこちらに対して挨拶をしてきたので、俺たちも挨拶を返す。行きでは見かけることがなかったので、今初めて見たが、意外とアニメなどで見た通りだった。
「今のが行商人ってやつ?」
「そうだよ。この時間帯に外の方に出るの馬車を見かけるのは珍しいけどね」
「そうなのか?」
「夜は危険だからね。ほとんどの人は朝一とかで出発するよ」
「そうなのか」
もはやイベントと呼べるかどうかすら怪しいレベルのイベントを経て、俺たちが街へと戻って来たのはもう夕日が半分ほど沈み始めているころだった。
さすがに時間が遅かったらしく、朝のような行列はなく、スムーズに列は進んでいって、すぐに自分たちの番になった。
「カードの提示をお願いします」
「はい」
「どうぞ」
「はい、確認しました。それでは中へお入りください。次の方どうぞ」
カードの確認でも特に問題はなく、普通に街の中へと入れた。そして、リコリスとはここで一旦お別れである。
「今日はありがとう! 久しぶりに外に出られて楽しかったよ」
「こちらこそ、リコリスのおかげでちゃんと上達した実感があったよ」
「それじゃあ、また今度ねー!」
「ああ、また今度」
リコリスと別れた俺はギルドではなく、宿屋に直接向かう。理由は簡単で、今日はもう疲れたからだ。さすがに何時間も歩いては戦い、歩いては戦いを繰り返したのはキツかった。もうそのままベッドに倒れ込みたい気分である。こうして考えている間にも俺は道を進んでいるので、ほどなくして宿屋へと着いた。
「あら、リョータ。おかえりなさい」
「レイラさん。ただいま」
「随分と疲れてそうだけど、初めての冒険は大変だった?」
「それは、もう楽しかったですけど、朝から夕方まではさすがに疲れました」
宿屋に入るとすぐにレイラさんが俺に声をかけてくれた。俺も疲れてはいるが、レイラさんに笑顔で伝える。本当に楽しかったのは間違いないからな。
「お疲れ様。さて、晩御飯は食べるのかい?」
「その前に真守たちに会ってきます」
「それなら、部屋にいると思うから行ってきな」
「わかりました、ありがとうございます」
俺はどうせなら晩御飯もみんなで食べたいと考えて、とりあえず真守たちに会いに行こうとすると、レイラさんはすぐに部屋にいることを教えてくれた。俺はレイラさんへと感謝の言葉を述べると、そのまま階段を上がって行った。
☆★☆
「お母さん、あのお兄ちゃん帰ってきた?」
「帰ってきたよ」
「わぁーい!」
リョータが帰ってきたことを伝えると、喜ぶ我が娘。なぜだか分からないけれど、リョータのことを気に入ったらしいのよね。またいたずらを仕掛けないようにしっかりと釘を刺しておく。
「また昨日みたいなことしたら怒るからね」
「はーい」
生返事で答える娘。リョータに迷惑がかからないといいんだけどねぇ。