復讐の見本市
気持ちはすっきりとしていた。立花には振り返るなど言ったことはしないのだ。騒がしい声が聞こえる。政治家が恥ずかしいほどのことを堂々としているのだ。わかっていないのだろう。どれほど擦り付けという行為がくだらない身勝手な行為であることを。証人喚問するとか言っても天下り先があるから隠すだろう。矛盾は自分から作り上げることなのだと知っておくべきだ。全てがあだになる。聞くことができない人間や擦り付ければ難を逃れることができると思っているのは机上だけにしてほしいのだ。目立ちがりにはうんざりだ。責任を持つのなら構わないがそんな心意気もない奴が大きなことを言っているだけじゃ誰でもできるってものだ。考えていると知らず知らずにたどり着いた。躊躇なく開けた。
「いらっしゃい。って信之か。」
「残念か?」
「ありがたいよ。夜になっても客はろくに来ない。宴をするなら暖簾をしまっておくだけさ。」
彼の言葉にうなずいた。気が知れた仲であることをわかっているのは少ない。打ち明けることなどしなくてもいいと思ったのだ。手際よく暖簾をしまった。つまみといつも飲む酒を出してきた。
「お前も気づいているんだろ。俺のやったこと。」
菊岡は待っていた言葉なのか驚いたこともなかった。数日前に聞きに来たのだから。
「それでどうするつもり?」
「あの日に死ぬつもりだ。準備もできている。あの場所で終わらせるのが最もいい方法だからな。お前も来るか?」
「あぁ。行くさ。園長もつべこべ言わないだろうよ。うまい飯を今のうちに食べておけよ。」
満面の笑みに返すのは笑顔しかなかった。数年間見せなかったものだ。作り笑顔も疲れると知っているのは向かい合った人間くらいでそう会うことのない人間は気づくことはない。興味がないのだ。
「どうやって逝く計画なんだ?」
「青酸カリさ。余ったものを使えばいい。そのまま飲むのに勇気がいるのなら混ぜてしまえばいいんだよ。そうだ、そこのワインを貸せ。」
目の前にあったワインの瓶に目を付けた。此処に入れれば疑うことは少ないだろう。コルク式ではなく、回して開けるタイプなので開けて注げばいい。
「もって帰るのなら袋を用意するよ。」
「そうしてくれ。あと、此処を燃やせ。警察を惑わすためにね。簡単だ。仕込みといって天かすをざるの上に大量に作っておいておくだけのことだ。お前の手で燃やしていない。俺も住んでいるアパートを燃やす。それでどうだ?」
「それでいい。警察のことなら信之の言うことを聞くことがいいからな。思い込み捜査をするといったのはお前が栄一の時だもんな。親父のこともおふくろのこともつぶした。罪悪感なんてない人間の集まりなのかな。」
菊岡はワインを入れるビニール袋とクッションとして反発のあるやわらかいものをもってきて包んだ。2人しかわからない暗号なのだ。立花の復讐を止めたのは菊岡であったから全て知っている。それに大ごとになっていない分、謎となるだけだ。




