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泣いた烏  作者: 実嵐
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路地の下世話

ライバル会社に行った帰りに柴田は黒崎を連れていきたい場所があった。関係しているであろう人物であるのは間違いないが、認めるかどうかは別の問題なのだ。路地を通って狭さを感じることしかない。

「此処らを通ったことありますね。」

「何時来たんだ?」

「立花さんが歓迎会をしたいとか言って無理を聞いていくれる店を知っているといってきました。青柳事件を少し捜査しているときに言われました。」

なんだかんだ話しているときにふっと立ち止まった。しまっているのが見えたからだ。礼儀正しく不定休と書かれているのだ。看板に目線が行かなくとも大丈夫なようにドアに休業と書かれている。プラスチックで無期櫃のような感じは漂っているのかもしれない。立ち止まっていると常連なのかラフな格好である程度飲み歩いたようなほろ酔いの感じを思わせた。

「今日は休みか。大将の粋なつまみを食べる気分だったのに・・・。残念だ。」

2人の存在を気づかずに独り言を言ってすたすたとかえって言った。茫然とするしかない。雑誌にもネット上にも載せない徹底ぶりには頭が下がるほどだ。

「此処の大将はな、有名ホテル出身で副料理長までいった逸材らしいが、その副料理長だった時に料理長とそりが合わなくてやめたんだとさ。此処で店やっているのがもったいないくらいの腕らしくていまだにホテルから声がかかっているのに断っている。」

「どうしてそこまで知っているのですか?」

黒崎の問いかけににやりと笑みを浮かべた。本当にうれしいことらしい。今の姿を見ていると誰もが異様だといわれてもおかしくないだろうが周りが見えないくらいになっている。

「立花から聞いたんだ。あいつは菊岡のことをホテルから聞きこんだほどだ。偽った捜査の仕方だがな、あいつにとっては合法だったってわけさ。何処に就職したかは聞けばいいんだからな。内部情報まで含んでいるから詳しすぎるほどだよな。」

「就職した場所がわかるっていうのはどうしてですか?」

「養護施設だよ。頻繁に行っていたらしゃべってもおかしくはないだろう。そういうのを思うんだ。帰る場所っていうのがそこしかないのだからな。育った状況があるだろう。」

彼の表情を変える姿は痛々しいと思わせるほどだった。養護施設に行ったからこそなのだろう。事情とか言っても大人の勝手な事情に振り回されている場合だってあるのだ。それをいずれ恨む人だって出てくるだろう。救いようのないものだってあるはず。


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