声を見えない
社長は早口で告げるように言った。それはデータや資料を改ざんをするのくらい考えられないとダメなのだといっていた。社長は立花秀介の同級生で会社を立てる時に祝いに来たほどの仲だった。様子がおかしいと思っていながら見殺ししたような感覚が今も抜けず、夜になるたびに眠れなくなる時があるのだ。
「あいつの約束を守って来た人達には必ず、誰から聞いて入ったかを聞いてくれという項目を増やした。それは立花のことを信頼をしている人達を見捨てないために・・・。」
彼の言葉には多くの意味をもっているのだ。それは今の政治家は可笑しいというものだ。官僚からバカにされているのにわからず傲慢に権力にうぬぼれているのがわかるからだ。
「あ・・・。」
「どうしましたか?」
初老といえるが元気であるために来ているのだとすれば顧問とかでいるのだろうと思った。
「何時か忘れましたが、爆破された会社のうちどれかといわれれば断定することは不可能ですが、ビルの近くで信之といっていたのを思い出しました。その時、立花さんの息子がそこで働いているのかと思ったんですよ。」
「ちょっと待ってください。息子の名前を知らないといっていたりする人がいるのにどうして貴方は知っているのですか?」
「それは立花さんが特別研究員になる前だったこともあって、子供がもうすぐ生まれそうだって。男の子だったら信之にしたいって。むしろ、男の子のほうがいいとか言ってましたね。女の子は奥さんが溺愛しそうで独占しそうで嫌だといって。」
黒崎は手帳に急ぐように書いている。ページをめくる音が心地よいと思うかは別問題だと思った。話している男性は思い出すのは少し嫌なのだろうが何かにつながればと思っているのだろう。
「信之といっていたのは男性ですか?女性ですか?」
「男性ですよ。私から見ると若いね。何処かからの帰りなのかレジ袋をもっていましたよ。」
「あと、一つだけいいですか?特別研究員とは何ですか?」
並んで座っているうちの真ん中あたりから弱弱しい声が聞こえた。経験者なのだろう。
「特別研究員っていうのは暴力団の売り渡すための薬を作っていたんですよ。それも助ける薬じゃない、人殺しを黙認するための薬を製薬するんですよ。聞かされたときは震えあがりました。才能を使っているのだってね。努力を無駄にしているようにしか思えなかったんです。」
泣き出しそうなほどの声だった。放っておいたら嗚咽や後悔を吐き出すだろうと思った。殺す薬を作るつもりはなかっただろうから。




