叫びは死でしか伝わらない
並んだ姿は何処かの面接をしているかのような気持ちになってしまうが、たいてい幻想にすぎないのだ。
「藤田製薬会社の何を聞きたいのですか?」
「なんでもいいんです。思ったこと、感じたことを聞きたいんです。」
柴田の言葉に少しばかり悩んでいるふりをしているともとれる人がいる。本気で悩んでいる人もいる。お茶のすする音が鳴っているのだ。沈黙が続いたときが若者が口を開いた。
「俺が此処に来たのはある人の約束を守ったにすぎません。その人の捜査を可笑しいと声を上げても聞き入れてくれなかったのは警察のほうですよ。」
「その約束した人の名前は?」
黒崎の思うままに問う姿は立花と一緒に組んだ期間は短かったがよかったといえるのだろう。
「立花秀介さんです。俺はまだ学生だった時に藤田から目をつけられていて・・・。新聞で化学のことに詳しかったことを買われたんです。社長はアルバイトでもいいからといって働いたんです。もちろん、アルバイトというのは伊達でした。いたのは特別研究員としていました。主任は立花さんです。ある程度、会社を疑っていたようでした。それは俺が友達から聞いた話を言ったんです。それからというもの、立花さんは元気をなくしていました。やって来たことが間違いだとも。」
彼の嘘のない真剣な顔といら立ちを含んだ姿を見ていると立花秀介という男は信頼があったということを表しているのだ。
「それで・・・。」
「家族の話をまずしくなくなりました。そして、こう言われたんです。立花さんに何かあったらすぐに会社を辞めて別の会社に逃げろって。ライバル会社のようがいいって。そのほうが変なことをしてしまうと自分自身を気づけることになるとわかっていたんだと思います。」
「私のそうです。此処にいるメンバーは立花さんの言葉をち忠実に守ることしかできなくて後悔しているんです。藤田はネットでブラック企業を呼ばれている通りですよ。研究員なんて捨て駒なんでしょう。成果を出さないとボーナスなんて出ないから苦しい生活をしていました。」
話を聞いているとドアのガチャという音が響いた。見てみるとラフな格好をしているがやさしさに満ち溢れていると。
「社長。」
「来なくてもいいといったはずでは?」
社長と呼ばれた男性は若く頑固そうだが、柔軟な才能を使って此処まで会社を大きくしてきたのだろうと感心した。
「ライバル会社といえ放っておけない性分なんです。政府は裁量労働制を広げるなんて言うのは会社の利得であって社員の生活は守られていない。そんなふざけた話ありますか?だますようなデータを放置していてどうにかしようとしていたのは確かなんです。人口が減っていると問題になっているのに殺そうとしているのは政府のほう。若者の過労自殺とかが多いことなんてくだらないと思っているんですよ。バカにするのもいい加減にしてもらいたい。会社はね、都合よく改ざんを指示することだってあるってことも一番わかっていない。みなし労働だとか会社優勢の制度に過ぎないのだから。」




