警察ごっこ
「藤田製薬会社というのは表向きはいい会社だといわれますけど、今回のように暴力団とかかわりがあったのではと以前から噂程度ではありましたが評判は悪かったですよ。特に、研究員からですね。」
「誰が流したとか犯人捜しをしたりしないんですか?」
彼は問いかけに遠くを眺めるようにしている。会社の犯人捜しが存在していたとすれば不信感をさらに増す可能性だって高いのだ。それすら惜しまなかったとするなら社員に対して情も何もないといえるだろう。
「ありましたね。それで確か・・・立花が犯人じゃないのかといって刑事ぶって取り調べをしていましたよ。あの人にはそんなことできるはずがないと思っていたけど、ある意味どうでもよかったのかもしれないですね。」
「取り調べってかなりの拘束されたんじゃないんですか?」
「・・・1週間とかですかね。それで働いていないから減額ですよ。立花はその時、特別研究員の主任をしていたからそれが関係するんじゃないのかなって今になって思うんですよ。」
社員を不信感を漂わせているのに気づくことができなかった会社は痛手を受けたのだろう。いい人材を外に出すことになったのだ。それも立花に対して尊敬と信頼していた研究員。育てた人材を捨てるような行動をしたのだ。上が間違えた判断をすれば守ることもできないのだろう。
「あいつのことを話そうと思ったのはテレビでは訴訟を起こしたことしか注目されていなかったからですよ。それ以外にもいるよと伝えるためです。勝手に贖罪とか抱えられたら息子が邪魔になるかなと思って・・・。警察の再捜査を望みますよ。判断ミスは何処までも自分を苦しめるだけですから。」
それが彼が来て語った最後の言葉だった。警察が自殺だと断定をしたのは何処までも無責任だったのだ。藤田製薬会社の特別研究員の存在を探ってもいいのかもしれないと思った。何故、主任をしているのに疑われる対象になるのだろう。普通だとそうはならないだろう。柴田の様子を見ていた課長がコーヒーをもってきながら来た。
「藤田製薬会社を狙われるわけがあると思うか?」
「えーまぁ、社員を平気で疑われる会社なんてどうなんだと思ってしまって・・・。社員に噂をされる時点で可笑しいと思ってしまうんですけど。」
柴田の言葉に時折課長はうなずいていた。思うことがあるのだろうと思ってしまった。過去の事件を積み重ねているのはきっと警察なのではと思った。疑うのは取り調べをするだけではないのだろうと思った。思い込みが判断を鈍らすことを知らないとならないと。




