色を付ける方法
羽田康江はほほえましく見えていた。子供にせかされるまま、遊んでいる信之は花を開かせていた。
「私たちも助かりますね。時々でも来てくれると。」
「まぁ、あの子にとっては此処は頭をすっきりさせる場所だとしか思ってないだけどね。そういえばあれ作っている?むしろできた?」
心地よい風のように問いかけるのは彼女の癖に思えた。
「できたんです。どうしてここでレシピがいるんですか?」
「彼の母親のレシピなのよ。2枚だけのメモを置いていったらしいの。だからおふくろの味があるなら食べて覚えておいてもらわないとね。美幸さん。」
康江にあるのは複雑な事情をきらめくことができる状況を作り上げることだった。信之はできたのがわかったのか子供と遊ぶのをやめて中に入って来た。見た目は大所帯の家族だろう。血がつながっていないのを見せないようにしている。大きなテーブルに並んで座った。彼の視線が向けられたのはハンバーグだった。そろって大きな声と笑顔が見られた。子供は一心不乱に食べている。
「園長、その人は?」
食べながら不思議な顔をしていた。来た時から疑問をもっていたが、遊んでいて聞けなかったのだろう。
「此処で働いてもらっているの。保育士になりたいそうなんだけど、試験が通らないとダメとあるから勉強で来てもらっている南美幸さん。」
「そうか。どうも初めまして。此処で育った立花信之です。大概のことはわかってますから。あと時折来る達樹もよろしくお願いしますね。」
康江は此処でもニコニコしていた。信之はせっせと食べることに集中した。子供たちより早く済んだ。
「じゃあ全て済んだら俺の部屋に来てよ。あと、趣味でやってる新聞のスナップもよろしくね。」
そそくさといってしまった。礼儀の中に見え隠れするのは簡単に信じないといっている行動だった。南にとっては不愉快極まりないが、羽田にとってはいつものことと割り切っているように思えた。
「あそこまで進んだのね。少しの進歩を感じるわ。」
「あれが進歩ですか。不愉快しかないですよ。」
しょうがないことというように彼女の肩に手を乗せた。
「此処にいる子は親からの虐待とか事故で死んだとかいろいろある子なの。人に心に開かない子もいてもおかしくないの。」
景色が見せる鮮やかな現実ではなかった。それを教えてくれた子でもあった。達樹と遊ぶばかりで他の子とはあまり遊ぶどころか避けていた。達樹とは兄弟同然に育ったこともあるのだろう。