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泣いた烏  作者: 実嵐
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謝罪の弁

黒崎が悩んでいたのを思い出して自己解決できるなんて思うのはなしだと思って一番近くにいる人間を聞くのが正しいと思った。柴田は仕事を早く切り上げてることにして路地を歩いた。明るい光が灯のように輝いていた。無論、空想だの言ってくれて構わない。妄想で人を動かすのはあってはならないことだ。和風に見ているのは表の恰好に過ぎない。ドアを遠慮がちに開けた。

「いらっしゃい。」

「久しぶりだな。菊岡。」

客はまばらだと余計いいのだろうが、いなかった。気温との因果関係を言い出すときりがないのでやめることにする。菊岡は水を出すことなく、無言でビールが出てきた。何回か来たから覚えていたのだろう。人の好みを覚えることは可能なのだ。

「柴田は信之とうまいことやっているか。そういえば、信之が喧嘩したとか言って酒を飲みすぎていたな。本当、律儀なんだかわけわからないでしょ。」

「それでいいんだ。あいつは何も言わない。俺もその時は気分や状況で怒ってしまったのかもしれないな。そうでもしないと伝わらないということを教えてないとダメなんだよ。警察が嫌いな癖に警察にいること自体がおかしいんだけどな。」

彼は小さく笑った。高笑いするほどの状況じゃないのだ。未知数なのかもしれない。菊岡も飲むのかグラスを出してきた。

「愚痴でもなんでも聞くよ。あいつの話を共感してくれるのは貴方しかない。皮肉かもしれないけど。俺の話をする奴はホテルに行けばする奴はいる。悪口だろうがいいことだろうが限りなくね。けど、いないから・・・。」

菊岡は寂しそうに悲しそうにうれしそうにいろんな感情が重なっているのだ。養護施設からともに過ごし嫌なことも知っているのだ。今でも何処かで思っているのだろう。だから、安定したホテルをやめることにしたのだろう。

「立花の親父さんって藤田製薬会社にいたんでしょ。それも主任の研究員だ。エリートだよね。その人が自殺って処理した警察が信じられない。」

「自殺するような人が店舗兼自宅の住所を書き留めておくかな。むしろ、見てるんだよね。そこも打ち消して自殺だなんて決めつけにかかるから被害者遺族にも不幸が来るんだ。あいつは思っているよ。自分は幸せになってはいけないって。」

「それって菊岡も同じでしょ。悲観してみてるわけじゃないのに俺だって悲しくなるよ。笑えない遺族とかがいるのは俺も関わって来たこともあって知っているよ。けど・・・。」

柴田の飲み干したビールのグラスが汗をかいていた。慌てている警察のように・・・。


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