愚問の正論
黒崎は捜査一課にいるのが嫌になり屋上に上がった。晴天であるが心が晴れることはない。立花は未解決事件捜査課にいるにはもったいないといって異動を要請したのだ。人を見るのが癖じゃないと見抜けないことばかりだ。大声を出すとすっきりするというがそれにも体力がいるのがわかっているのでやめることにした。
「黒崎か。」
声がしたので振り返ると柴田が缶コーヒーをもって立っていた。缶コーヒーを両手に抱えているのは癖に近いのだろう。真顔でいるのは状況を察するのだろう。
「立花に言い合おうとするなんてな勝てないよ。あいつには信用できる奴がいないのと同じだからな。テレビを見てみろよ。大人になり切れていない大人が偉そうに正論ぶったことを言っているんだ。謝罪もできない。子供以下だ。言い訳しかはけないのは未熟だからだ。」
「だからといって少ししかいなかった人間のことを見抜けますか?」
柴田は愚問を吐いていると思っているのか声を上げて笑った。飲み切った缶をコンクリートに置いた。
「見抜けるよ。あいつはそばにいる奴ほど信用できない。前にいた相棒が楠だったこともあってな。能力が高まって行ってな。太刀打ちなんてするものじゃない。」
外はあわただしく動いているだけで止まっているのだ。いくらネットが重要だとしてもアクセスによっては全てを失う覚悟もない金儲けしか目にない奴がばちに当たるのだろう。黒崎は行き場のない愚痴を話せるのは柴田しかいない。
「柴田さんが警視庁にいてくれてありがたいですよ。俺だけだったら立花さんのことで悩み切ってしまって対応できないんです。事件は正義の仮面をかぶった悪人が調べているようじゃあ冤罪を生むばかりです。」
「深く考える時とそうでないときをうまいこと判別しないと困るぞ。自分で作り上げた沼でおぼれることを避けてほしいからな。刑事は多いよ。理想でおぼれて失望するのは・・・。」
彼の目は輝きは消えない。立花に救われたのだろう。警察学校にいたころに出会い全てを作り直したといわれていたりするほどだ。
「希望を忘れるなっていうことですか?」
「そんな言葉で表せられるのはダメだよ。作り出す側になるべきなんだ。言い訳並べて自己保身に時間をかけるより認めるほうが時間はかからない。バッシングを受けたとしてもだ。誠実さはわかるものだ。子供みたいにぐじぐじほざいたところで誰が共感する?同情もしないだろう。みっともないことを恥ずかし気もなくしていると思われるだけだ。」




