かすれた声
「ニュースでやっているだろう。形だけの謝罪をするんだよ。権力に流されたものは飲み込まれてもがいたりすることないから堂々と飲み込まれるんだ。スカスカのスポンジのようなものを偉そうにされても困るだけだ。いる価値がないと人からさげすまされることを選んでいるようだな。」
「バカですよね。居場所がなくなってもあると勘違いするんですよ。ないものはない。」
服部は癖なのか鞄から新聞を取り出した。地方紙を読むのもいいだろうが、全国紙ほど話題に使われることが多いのだ。立花はコーヒーを飲み干して新たなコーヒーを頼んだ。権力に頼るのは自分に誇るものがないのだ。肩書に頼るしか価値がないと思い込んでいるのかどうかは本人次第だが、国会議員とかは言うのだろうか。不正をしてもいくら税金という他人の金を使っているとしても・・・。俺を誰だと思っているのかと。勝手に生み出した借金を自らの手で返す制度でも作ればいい。そしたら無駄遣いなんて大それたことをしないだろう。それも大企業の会社員と同じ給料ではない。中小企業でもない。アルバイトやパートと同じにすればいいのだ。不正額分を働くのだ。社会的制裁としてはいい効果があるだろう。上に立っていたとしても不正を犯したとわかれば罰がある。それは当たり前にしないと終わらないのだ。屑やカスみたいな人達のための金じゃない。勘違いした人間や傲慢になったり驕りの塊には効かないわけがない。世間体の塊。世間体が全てだと思っているのだ。偉そうにかなえられるはずのない嘘を言うのだ。
「それじゃああの事は俺たちだけの秘密ですよ。」
「わかっている。俺には形ばかりの解決を望まないから一応一生追いかけることになるけど、構わないよ。君が晴れるのならね。ただ、彼には会うな。ばれるぞ。ついていった部下がいるからな。」
「あいつがあんなことを起こした理由を知っているのは俺ですから。しょうがないですよ。こうでしかいきれなかったんですから。表に出てこれなくなったなんてとんだ奴らとしか思えないでしょう。」
彼の目は寂しさを感じさせた。感じさせたところで解決するわけではない。新聞には会社の不正が一面だった。その次に乗っていたのは反省の色のない犯人の裁判。国会議員の悪びれない態度。失言。かわいそうな奴だとさげすんだところで何が生まれる?単なる自分に対する優越感くらいだろうか。共感呼ばない偽りの声だろうか。悲劇だろうか。喜劇だろうか。裸の王様がうじゃうじゃいる組織は壊れる。




