証明
立花はいなれた町から少し離れた郊外に出た。小さな工場にあふれている。指定された場所は無人駅から近かった。何故、町の便利なところにすまないのかという疑問が生まれても生まないようにもみ消してしまえばいい。ただそれは事件をもみ消すわけじゃないのだ。喫茶店に行きコーヒーが来るまで待つことにした。ドアの鈴の音色がモダンな感じを思わせるが有無を言う必要はないため黙っているのが正しいのだ。外を見たところで車の行き来がせわしないだけ。
「すいません。待たせましたね。」
声をかけてきたのは伊達メガネをつけてそこにはなじまないような恰好だった。気取っているようにしか思えなかった。向かいの席に座るとコーヒーを頼んだ。
「さっき来たところですから心配することはありませんよ。服部さん。」
服部新司という男は派遣でこの近くの工場で働いているのだ。今日は休みであるからといってきたのだ。慌てることのないおとなしい感じだ。店員は察して同じように出してきた。
「計画はうまくいってますか?」
「あぁ、間違いなくね。俺がかかわっている事件が明るみに出ることはないだろうから安心しなよ。こっちからかける時は公衆電話だから切らないでよ。」
今では利用価値の少なくなったものを利用することは拡散に諮ることができる。特定できたとしても次に動けなくなることが可能なのだ。いくら履歴が残ったとしても時間で目撃者探しに時間がかかるのだ。
「キチンと動いているのならいいですよ。ばれることなんて少ないですよね。」
「特定の人は外されるというわけのわからないことを主張する組織だ。欺いたところでやむ必要はない。もし疑いが来たとしても関係ないといっておけばいい。下手な動きをしない限り、そう深く疑われない。」
コーヒーを苦味というものを感じながら飲んだ。産地にこだわることはないので特に考えることなく飲む。組織にいてもいないことになる人間が一番得になる方法を考えるのだ。テレビや週刊誌やネットでは嘘と誠がざわめていている。報われることも少ないが存在する。けど、大半が報われないことなのだ。
「そういえばそろそろ派遣で移動しようなので書きましょうか?」
「書かないほうがいい。下手に痕跡を残して壊れるのは嫌だ。まだ終わっていない。確定するまで終わらないゲームみたいなものだよ。貴方だって痛手なことがあるんだから。」
「わかりました。でも暗号にしておけばばれることはないでしょう。」
服部の作り笑顔じゃない笑顔は満たされていることを証明していた。




