歩み方
俺は警視庁出た後、繁華街を避けるように住宅街の中に入っていた。似たような形の家を眺めた。騒がしいのは子供の声だった。一軒家のように見えるが衰えの見える建物を見た。門構えが校門のように見えたところに入った。
「信之。久しぶりね。」
此処が養護施設だと到底思えないように見えないだろう。あっさり受け入れられたので入っていた。声をかけてきたのは園長の羽田康江だった。高齢者とか言われる世代になったというのにそう見えない動きをする。いたときからそうだった。子供を自分の娘や息子だと思っているからもあるだろう。ワイワイ騒いでいた子供たちも静かにして俺の手を強引に引き寄せた。
「頻繁に来るからなついているみたいね。少し遊んであげて。貴方の好きな料理にしてあげるから。どうせこの状態では無理でしょう。」
子供に言い聞かせるように言った。幼いころから見ていた分よくわかっている。俺は鞄を家に上げて広い庭で遊んだ。子供たちは俺のいたときより増えているのは知っている。事情は多様だが、何時か受け入れるのだろう。いや、受け入れざる負えない現実だとしか映らないのかは個性によるが・・・。無邪気にはしゃぐ姿は全てを忘れさせてくれる見つからない息抜きのように思った。
「元気だね。」
「よく言うわよ。信之を心待ちにするようになってしまったのよ。だから、時々顔出さないとならないのよ。困らないの?」
「構わないよ。こんな俺でも必要だって言ってるみたいじゃないか。」
無邪気さが映ったのかニコニコしているのがわかった。きっとそれなら保育士になれとか思っているのだろう。
「もう、そういって甘やかさないでね。いずれ社会の渦に失望するのは嫌なんだから。」
「わかってるよ。だからあまり何ももって来ないじゃないか。記念日しかね。そういえば、達樹は来てるのか?」
思い出したかのように康江に問うと嬉しそうに縦に首を動かした。達樹は此処で来た親友よりも深い人物だ。近くで小さな料理屋を営んでいる。
「きて料理を作って喜ばしているわ。興味を持ち始めた子もいるの。だから高校出たら弟子にしてもらってと言い聞かせてるの。信之の影響受けている子もいるの。たぶん警察官が輝かしいと思ってるのよ。それに刑事でしょ。」
子供のころ、何時か人の憧れになるとは思わなかった。ときの流れを遅いと嘆いていたのが嘘のように問いかけている。
「あそんでよ。信之。」
突然、動きを止めた信之に喝を入れてきた。
「わかったよ。」