異動の元
黒崎は2日ぶりに警視庁に入った。突然の休暇であったため、計画的に動くことは不可であってので近場をうろうろしただけのあいまいなものだった。捜査一課の前を何事も思うことなく通っていると捜査一課に配属されている同期の刑事がすたすたとやって来た。
「お前、すごいな。未解決事件捜査課からデータを扱っていた前より上だぞ。よかったな。俺も何時か追い抜くからな。」
「そうなのか?」
「何、大事な話流れていないのか。こっちじゃあ大騒ぎだぜ。楠っていう自堕落な奴が消えてさ。その代わりがお前でそれも結構な奴を抜いたんだ。試験受けりゃ上行けるぜ。ってことで明日からだからよろしくな。」
痛いくらいの力で背中をたたいた。彼自身納得していなかった。何もしていない。事件を解決したわけじゃないのに何処から評価されたのだろうか。未解決事件捜査課のドアはいつも迎え入れているはずだったのに拒んでいるように思えた。開けると浅間が変わらぬ時間を過ごしていた。
「おはようございます。」
「おはよう。」
黒崎はパソコンに向かって青柳の事件のことを調べていた。沈黙という故意の時間に耐えられなかった。
「あのー、立花さんはどうしたんですか?」
「休みだ。昨日、藤田製薬会社を落としたからという功績があるからな。彼は上に行きたがらないのは知っているし、その上あまり休んでいないことも含めてのことだよ。」
浅間の言い方は深く考えていないように思えた。空いている机には正論を問うものがいない。未解決事件捜査課は求めるものはかすかであるのだ。
「休むことに何も問わなかったんですか?」
「言わないよ。立花君は言っても俺の言葉は響かないからね。それも知って言う人は少ないよ。時間の無駄だ。」
黒崎の手は汗がたまっていた。何に対するものなのかは無論知ったことではない。言いたいことを言っても対抗する人間がいないのだ。自由に動いているのは組織に反発していることを知っていても無視するのをわかっているからなのだ。
「何時まで休みなんですか?」
「明日までだよ。何時までだってもう関係ないわけだから今日頑張るだけだね。」
浅間に言葉を吐きたいが関係ないと突っ放しているようにいるように思えた。飲み込んでも苦しむだけであるのだ。此処は空間にあるのは理解と権力が無造作に置かれているのだろうと思った。作り上げるものは未熟でいたしかないのだから。
「俺は此処に来ます。」
「後悔するやめておけ。」
答えを求めていない。




