変えられぬ答え
「テレビじゃあくだらない経営者が浮かれているだろう。自画自賛なんて成果を上げた人間ほどしないよ。何もせずに人の成果を自分のものにするためだろうな。逃げるだけの持ち逃げもいるし、勘違いをしても誰も正そうとする気がないのだろう。つまらないね。和解もできる余地なんてない。」
酔った信之は上機嫌に愚痴をこぼしていた。皿にきれいに飾られていた料理はなくなった。締めの料理を出そうとしているのを止めた。
「今日は食べないのか?」
「そうじゃない。まだ飲ませてくれ。お前は明日も開かないとダメだからやめてもいいから俺だけでも・・・。」
グラスにぽとぽとと音を鳴らした。達樹の表情はいつも以上に堅かった。何かを察したのだろうか。つぶやかない言葉を探しているのだろうか。
「俺も飲むよ。今日、それほど飲むというのは、明日休みだろうしな。」
「正解。部下が休んだからと大きなものを上げたからだって。いずれにしても上の決断で下がる人間が増えるのは確かだよ。」
此処まで思いつめたような顔をしているのは久しぶりだった。達樹は謎だとか思わないのだろうから。
「忘れてしまいたいことは忘れろ。そのほうがお前のためだ。」
「いや、忘れないよ。俺の今を作り上げたのはあれがあったからだった。」
言葉の1つ1つが歩むべきではない道を選んでいるように思えた。警察という職は手段の一部であって人助けとか素朴なものがもともとないのだ。正義という仮面をかぶっておきながら事件をもみ消すのではなく、無気力にやって成果を出すのは嫌だろうと思われる。信之の親父は自殺として処理したときの警察の行動はお粗末であったのだ。かすかににじみ出る汗を隠すのは一苦労だった。
「達樹、俺はさ。藤田製薬会社が憎いんだよ。いまだに立っているのが嫌なんだ。あれを倒せば全てが終わるんだ。」
「もうそんな考えはやめろ。お前をずっと苦しめるだけだ。成功したとして何も報われることはあり得ない。お前が一番わかっているだろう。犯人の後悔した姿を見ているとき。」
「あんなのは演技だよ。悲しみ帯びた演技だ。裁判に出れば反省をしている演技をするんだ。そこら中に偽俳優はうじゃうじゃいるんだ。」
怒りは何処に導かれているのだろうか。解決はしないだろう。後悔をしていたのはあのころにしかないだろう。それはできなかったことによる後悔であってやった後悔なんて生まれていないのだ。いくら養護施設で被害者遺族を殺されたとしても・・・。




