過去の懺悔
「金がないとよっても来ないし、あっても多額の金しか興味ないんだよ。」
「この話はやめよう。」
柴田が話題を切り上げた。ビールを飲みほした。冷え切ったものがぬるくなっても構わない。泡を感じたくて飲んでいるわけじゃない。2杯目を柴田は頼んだ。ビールじゃなくてサワーにした。同じのでも構わないがどちらでも違いはない。
「青柳亮は生きていると思っているのか?」
「過程を重ねるとな。親父は素手だとして息子が道具をもっていたら退くだろう。それもいなくなったのは高校1年だ。体力もついているし戦うこともできるはずだからな。」
道具の鋭さによるのだろう。銃をもっていたらあまり見ない人なら怯えた表情をする。警察官だって引き金を引くときは戸惑ってしまうだろう。練習とその場の空気は違うのだから。
「此処まで親父が見つからないのなら埋めたことを前提に探すのが速いだろうな。なんせ、息子は無国籍なんだ。別人になるのは容易だ。」
箸で脂ぎったから揚げをつかんだ。ギトギトしているのは目にわかって拒否をしたくなったがやめた。嫌々口にしてビールで油を落とすつもりで流し込んだ。周りではテレビのことを話している。他人の不幸を喜ぶのだ。自分になったらとかはかすかに思うかもしれないが、少ないのだ。
「無国籍なら高校入れないだろう。」
「無国籍でも入れるように役所の人間がしたらしい。青柳玲が覚えていた。手続きをうまいことして帳消ししたんだろうな。いなくなった後の処理をしたとは思えない。闇に行ったと考えるな。生きているとしたら・・・だ。」
青柳玲は警視庁でも一時話題になった人間だ。無差別事件を起こしていながら何処か計画性を感じさせる行動があった。パソコンで襲う場所の下見をしていた。その日はイベントがあった。けれど、その地域にはチラシは出していない。新聞を取っている人間でも不可能だ。場所は近いかといえば近くはない。遠すぎると思った。パソコンで探すにしても時間がかかるだろうと思ってしまうのだ。キーワードがあまりにも特殊すぎる。裁判では反省していたが、情状酌量の余地がなかったこともあって死刑が下された。
「青柳玲の殺人事件は亮を探すための手段と思っている。高校2年にはぐれたといっていたからな。」
「上はそれを知っているのか。」
「知らないよ。個人の諸事象なんてくだらないと思っているとしか考えられないのだ。」
ガラスの大きな音にびっくりするばかりだ。事件は驚かないかもしれない。




