頂点の影の嘘
「ニュースで流れていたことでは分量が異常なくらい量が多かったみたいですね。裁判でもそのことを問われても社長はろくな謝罪をしなかったこともあって解任まで至っても幹部の位に居座ったという話です。」
目の前に現れたのはガラス張りの部屋だった。全てを見通させるようになっている。話を聞いていると組織自体が腐りきっているのに誰も声もあげず、働いていたというのだ。
「それとその当時話題になってましたけど、内部告発されて公になった人が死んだんですよね。匿名にしていたにも関わらず何処かで漏れてしまって幹部に殺されたとしか考えられません。」
何処までも異常な会社なのに平然と上から傍観者のふりをした悪人がいる。かかわっていないというだけの言葉の綾を使ったほころびを作った人間なのだ。秩序の解釈がずれているにも見て見ぬふりでやりとおすのだ。研究室はあっさり入れた。違和感しかなかった。簡単に入れないようにしているはずだ。携帯が鳴りだした。
「もしもし、俺だ。柴田だ。」
「それで?」
「防犯カメラを調べているんだけど、研究室が社長に監視体制になっていることを知った。そろそろ来るんじゃないのか。日下部のデータの物証は出すから。」
一方通行のような口調だったが構わなかった。心配しているのはわかったからだ。手探りで調べているのと違って何処かに何時ものように存在しているものがある。研究室のデータを取っていた。過去の事件につながるのだ。ぞろぞろとふんぞり返った背中には狭い理論と自分勝手な定義を抱えているのがうかがえた。株主総会を形ばかり行っていることがわかる。ガラスが壊れそうなほどの力でノックをした。立花と一緒についていた二課の奴も無視をした。
「勝手に立ち入られてはこちらも困る。立ち去ってくれないか。」
「なるほど、此処は見られてはいけないデータがうじゃうじゃ存在するということですね。それなら一層調べないといけないですね。おい、手を止めるな。親の仇を打てないと困るだろう。」
不敵な笑みばかりを浮かべる社長は強がっているようにしか見えなかった。何処かに弱みがあると思った。
「社長、会長は人殺しの薬を製造した研究者らしいですね。世間に知られたらバッシングを受けますよ。」
「騒ぐのは最初だけだ。うわべの言葉を畳みかければ解決するようになるんだよ。前だってそうだ。和解のために金を提示したら済んだんだ。そんなものだ。」
「貴方には守れないですね。同じかどうかはいくらか探ってからじゃないとどうにもなりませんよ。」




