声色の虹
ビル街にある種特殊な集団が集まっていた。黒スーツにいかつい顔から童顔まで混ざっているが皆考えていることは大概同じなのだ。1人だけくたびれたスーツが疲れた表情をのぞかせていた。
「課長、伝えるの忘れてましたが、一応未解決にいる立花です。」
柴田は友達を紹介するかのように軽かった。立花は警視庁では知られた存在だから詳しく言う必要もないと思っているのだ。
「そうか、君が取り合っている立花君かいな。今回、藤田製薬会社を行くのによう躊躇せーへんかったね。俺なら断るが・・・。」
「いずれしなければならないことです。俺は一度目の失敗は内通者がいたからだと思います。それを考えないでくだらない言い訳を言うようじゃ終わりですから。俺は別の理由があるからいるのだと思ってください。此処の城を崩すかはその内通者次第だというのは理解済みですから。」
柴田の手はこぶしを作るも充てる場所がないため、元に戻した。立花は飄々とした態度を示すため口論をするのが嫌になるのだろう。内通者がいることが予測できているため、あえて声に出すことで脅すという行為の一部になる。いくら黒字会社であったとしてもそのかかわっている人の人生を請け負う責任から逃げるようではだめなのだ。
「もうそうやってグダグダ言ってたってしゃーない。ほな、行くで。行動を見張られていると思ってせいよ。そのくらいの魂ないやつは此処から離れてもらうだけやからな。」
奮起させる言葉が何処かかすかな脅しに聞こえていたが忘れることにした。自動ドアが迎え入れることに戸惑うことなく開いた。受付の女性は声をかけるが、二課長は聞こえなかったのかという思うほどの動きだった。捜査令状を見せると内通とつながる電話を取った。それをふさいだのは立花だった。
「貴方、会社の人間だとしてもこんなことを許されないんですよ。貴方がデータを消させていたとでも言ってもいいですか?」
女性は懸命に首を横に振った。観念したのか電話を元の場所に置いた。
「いくら言われていたとしても余計な事をしないのが身のためですよ。内通者と合図送っていたでしょう。その人物は穢れた人生を歩む、それは貴方も同じですよ。これは砂の塔から崩れる音をいくらふさいでも無駄なんですよ。」
「警視庁捜査二課日下部栄人さんと社長は裏でつながっています。社長は日下部さんのお父さんの時に借りがあったという話です。捜査二課にするように、なったら来るようにという話を聞きました。」
くたびれたスーツに隠れたボイスレコーダーが聞き耳を立てて聞いていた。下世話だろうが判断するのは聞いた本人しかわからないのだ。




