時効のない時計
俺の手にある紙の厚さが何かの重みだと無意識に考えた。広瀬はかかわることを断るのは見えているが浅間は案外理解してくれるだろうと頼っているのがわかった。廊下はいつでも時期にかかわらず寒いのだ。ゆっくりとドアを開けた。
「戻って来たのか。立花君。広瀬君は辞表を出したそうだ。明日やめるみたいだから。」
突然、決めたようには見えなかった。あの冷め切った目にはどんなことが起こったとしても逃げていそうだ。パソコンが寂しそうにたたずんでいた。
「何時辞めるかの際にいたみたいだね。君が来て勝手に吹っ切れたのかもしれない。君は悪くないんだ。此処の存在が悪いんだ。」
「そうなんですか。安心してください。俺は簡単にやめないですよ。此処でも活動できるのならいいんです。」
強引に開けたのだろうか耳障りな音が鳴った。彼の表情はすがすがしい。俺は何も言わなかったし言えなかったのかもしれない。
「短い間だったが有難うって言ってもさっき来たばかりだから感謝も何もないけどな。」
「やめてどうするんです?」
「俺を雇ってくれる会社が見つかっていたからタイミングだけを探っていたんだ。それだから心配する必要はない。」
広瀬は言葉を置き去りにしていなくなった。沈黙は決まった時間に流れるのだろうか。むなしいだけなのだ。かすんだ目には正しい判断などできない。
「そういえば立花君、何の事件の資料をもっていたんだ。」
「中身を読んだら疑問に思ったものです。俺なら解決しておきたいだけですよ。浅間さんは俺を動かすのは無理ですよ。暴れ馬がいるようなものですから。」
「構わないよ。1人になるよりはずっといい。好きに調べて自分の中の疑問を解決してまえばいい。それが戸惑うことも何もかも忘れてしまうのだろうから。」
浅間のこぶしは行き場ややり場のなさを示しているように空想にでも思ってしまった。俺はあいた机を適当に選んで座った。浅間の顔は親と変わらない見守ることをしているのだろう。寂しさとかわびしさとかは感じることしかなかったのだろうから。資料を読み進めた。被害者は母子家庭の母親だった。青柳春香。アパートの階段から転倒したのだ。被疑者として挙がったのは元夫の田代海斗だった。事件が起きた時間帯に言い争っていたのを複数の人間が見ていたのだ。防犯カメラには逃げる姿のあった。けれど、重要参考人として取り調べを受けようかと話をしていたところで行方不明になった。そしてその数日後息子の青柳亮がいなくなった。