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泣いた烏  作者: 実嵐
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非協力と墓穴

警視庁に戻ってきた2人は未解決事件捜査課に一度顔を出した後に捜査一課に向かった。未解決事件とはいえ協力をしないのはどこか違うように思い組織の邪魔と言われる筋合いもないと感じながら重苦しく演じている冷たいドアを開けた。冷たい視線が注がれるのは痛いとか思うのはナンセンスだ。立花はずしずしと一課長の机の前まで来た。黒崎はついてくのがやっとだ。

「一課長、協力お願いできますか?」

「内容にもよるとだけは伝えておこう。で、何だ?」

一課長の冷め切った目におびえる黒崎と特に考えていないように見える立花との差があった。周りの視線は立花に向いているのはわかっている。どんなことを言ってくるのか。爆弾を仕掛けさせるのか。

「今、一課は爆破事件を追っていますよね。そこで関係者を探すのにいまだに派遣会社に行っていないのはどうかと思います。過去の経歴で派遣会社から雇っている人間がいます。それを調べてもらうついでに派遣会社でうわさになっている人物のピックアップをしてほしいという単純な話です。これでも断るつもりですか?」

彼の言葉にはうわべの捜査とデータの安易な認識の判断ばかりで嫌気の差したような言い方だった。捜査一課長は何も答えることができない。情報はどこから仕入れたのかと追求すれば彼においては認めたという判断が取られるので軽率な言葉は吐けない。未解決事件捜査課の話を聞いている彼に下手な言葉を吐くのは負け戦に仕掛けられてるのを知っていながらはまったようなものなのだ。

「わかった。その情報を提供しよう。」

「やはり提供しようなんですね。事件を解決してほしくないんですか。増えるだけ増えた遺族に対してろくな対応していないのに上から目線の謝罪なんてご法度であることもわからないんですか。」

「何が言いたい。」

一課長の逆鱗にふれたような空気感がうやむやに漂った。これでは協力をしてもらえなくなるのではないかと心配でたまらない。

「有効期限のあるものに頼るしかないやつには頼った分だけの罰が浮き上がってくるんですよ。それをまじまじと見ずに権力にほれるのはたいしたことじゃないといいたいだけです。別に協力してもらわなくたってこちらはかまいません。さっきなんとなく提示した話もなかったことにします。貴方がたが抱えている事件が大事になってとんでもない死者が出たときに回りまわって責任を取らされるというのに・・・。」

彼の言葉に絶句するしかない一課長を部下はどう見るのだろうか。もとは捜査一課にいたのを未解決事件捜査課に異動を決定したのは間違いなく彼の言葉であるのはわかった。楠が言ったとしても力のないのは知ったことなのだ。後ろ盾を得た人間がしたことだと思えば納得がいくのだ。楠の知ってか知らぬかの図に乗ったような態度を見てからは・・・。

「どうします?協力してもらえますか?いやなら拡大するであろう事を黙ってみておいてください。」

立花は立ち去ろうとした。そのとき、振り絞った声がささやくように聞こえた。

「待ってくれ。協力する。だから・・・。」

「認めましたね。俺と黒崎をあそこに行くように仕向けたのは貴方だって言うことを。」

「そうだ。未解決事件捜査課でただじっとしてくれればと思ったんだ。」

「嘘を言うのやめましょうよ。邪魔だったことくらいわかりますよ。いくら事件を解決しようともね。組織ではなく個人的主観で。そう一課長という座から離れたくないと子供じみた考えが働いたに過ぎないんでしょうね。ここにいる人たちも同じように裁いたらいいじゃないですか。偏見の塊が上にいる時点で間違っているのに気づかないお気楽な人たちにね。」

立花の言葉を聴くたびに絶句を繰り返している一課長は自ら降りるのだろう。クビというレッテルを貼られることはないが、いつか充満するであろう。家族にも迷惑をかけることになるのもわからなかったのだ。

「すまない。協力する。こちらの情報も提供するから援助という形でついてほしい。」

「虫が良すぎますよ。まだ立場がわからないんですか。事件を解決するに働いていた人間を落としたんだ。落ち度は自らの手で決めてください。爆破事件については貴方が土下座をしたらという契約にしましょう。」

黒崎は一課長をにらみつけた。何度にらみつけても換わらないだろう。

「黒崎、用事は済んだ。戻るぞ。」

明るいような声をかけられうなずいて立花を追いかけてドアを閉めた。捜査一課にはきっと張り詰めた空気が漂っていようと関係ない。彼自身の後の行動がかかわるだけでほかのやつらには関係ない。それだけははっきりしていた。

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