語る時計
飲んだり騒いだりしているうちにしめの空気が流れていた。創作料理に囲まれていたテーブルはスカスカの状態になっている。店主がエプロンでぬれた手を拭いた。
「これがラストの料理ね。オムライス。」
出汁がかかった変わり種のオムライスだった。けれどそれは2つだけで1つは普通の洋風の感じだった。テーブルで寝ている立花の見ている。
「珍しいね。泥酔するくらい飲んじゃうなんて・・・。うれしかったのか緊張したのかとかいろいろあるだろうからな。」
匂いをかぎつけた彼は起きて勢いで食べてまた寝てしまった。ささやかな幸せと呼べる空間なのかと思った。店主は無駄に声をかけることはない。
「すいませんね。つけで払ってもらうだなんて話を飲み込んじゃって。俺たちも少なからずつまらないプライドがあるんです。ですから・・・。」
「構いませんよ。俺は彼が此処に通い始めて気づいたことがあったんですよ。菊岡さんも立花さんも時折寂しそうな顔をするんです。見てられますか?俺たちじゃあ親の世代だというのにな。だから誰もいいから連れてきたらいいと思っていたんです。それがかなったんだと思うとね。感慨深い話だよね。」
適度の言葉はいい心地であった。粗末な扱いを受けない言葉たちが喜んでいるように思えてならなかった。1つ1つの見えない責任にさいなまれて見える責任に押しつぶされそうになっているのを溶かしていくのだろう。
「過去に何かあったんですかね。前に何か予言するかのように言われて簡単に答えられなかったんです。」
「まぁ、普通じゃ経験しないことをしてますから。けど、本当のことを話したら怒られるから嫌なんですよ。俺らの秘密です。」
重いような言葉がいたずらをするかのように言っている。店主は何処か飲み込んだように飲み込むように言っているのだ。時々言いかけるようにしている。
「普通じゃない経験って警察がかかわりますか?」
「かかわらないですよ。けど、信之は警察は嫌いですからね。信用なんて砂の塔のようなものだと教えられますよ。」
もっと大切なことがうじゃうじゃとあるのにそれを捨ててまで守ることであるかも問われるとも後付けのように言った。店主は片づけの時間と語る時間がわかっているのだろう。1人で切り盛りをする意味は空虚に浮かんでいるだけであった。それほどの見えない重いものを捨てることができないことを証明しているのだろう。
「叫び声を上げているのに警察は無視していると立場も糞もないですよね。自分たちの不正はもみ消す上にろくな処罰もされないんですから・・・。」




