息の根
「イーさんとこの暴れ馬はどないしてるんや。」
アーさんはけだるそうに聞いている。リングも興味ないのがあからさまだがお構いなしとしか思えないのだ。プラスチックのカップの安い音が響いたりしている。
「あいつは窓際にいったのは立花の所為だと思っているんですよ。裏で操れているとか勝手にブラックホールに張り込んでいるじゃないのかとしか思えないんですよ。」
「もうこうなったら後々どうしてこうなったか教えるのが億劫としか言えないね。」
世間話からこう言った此処じゃないといえないようなことを笑いながらしているのだろうと思った。穢れてた世の中に入るしかないのだろうから。
「リングさんのとこはわかったんやけど、イーさんのとこは何をやっとるんや?」
「今、テレビでやっているテロみたいな事件ですよ。まぁ、捨て駒で楠を警備に使うのもありかと考えているんです。明らかに組織に反したことをしてやめてくれるのを待っているのが正直なところですよ。」
彼の苦笑いを見せた。周りの人間は関係ないようなそぶりをしている。テレビに流れるのは断片的であることもあるから此処で聞いたほうがいいのだ。そこで協力するのかも決めるのだ。
「大手の工場が狙われているのは・・・。」
「一課では工場にいた人の恨みかと思っていたんですよ。けど、複数の会社が狙われているので定めることができないんですよ。」
「貸すなんて言う言葉を待っているんか?それは無理やで。一課から抜けて戻っているのと変わらへん。」
イーさんの落胆のため息が何処から漏れ出ているような感じがしてならなかった。アーさんは静けさを好まないのか黒崎に声をかけた。
「お前も黙って聞いているなんて品のないことしょうると思わへんのか。」
「思ってますよ。どう見ても入ってはいけない扉の目の前で立ち往生していることくらい察してください。」
「そうか。悪かったな。せやけど、入ってきても構わんからよ。」
アーさんの目の光が迎えてくれるのが伝わって来た。戸惑っていた心の歩き始めたように思えた。
「楠さんはどうしてあんなに勘違いしているというか傲慢というか・・・。」
「それはおじさんが確か・・・議員とかで権力あるとかって勘違いしているみたいですよ。けど、言っていることは無茶苦茶で困った暴れ馬ですよ。何時か息の根を止めるつもりですよ。」
彼の言葉は明るいがどこかで影がうごめているように聞こえた。黒崎は見えない闇に身震いするしかなかった。




