運命の時間のカウント
空の晴れやかな色を見る暇がないほどにあわただしかった。達樹は学校に行かない子たちの面倒を見ている。店はどうなのかと聞きたいが、羽田の手伝いをしているので聞けそうにない。リビングのようなところに貼ってあるカレンダーに赤字でリークと書かれていた。警告をしているようなほどの達筆な字だった。
「達樹、信之に一応電話かけてくれる?」
「あいつならしなくても来るよ。この日がどんな日かあいつが一番知っているんだから。」
彼の足元にしがみついている子供がじたばたしている。その様子を見て彼は首を横に振った。忙しいのも理解した上で遠慮がちにしているのだろうが、遠目から見ると拒否をしているように見える。豪華な食事が机いっぱいになっている。
「菊岡さんってお店大丈夫なんですか?」
「大丈夫らしいわよ。定休日を不定休にしているからどうにもなるって。それに自分の店だから配分はどうにでもなるしね。・・・信之にかけないと。」
里帰りを待つ母親のように心配している。固定電話をもっている。南に全てではないができる範囲のことをしてくれと言っているみたいだ。羽田は電子音が耳の近くで鳴り響いている。
「もしもし。」
「ラポールの園長なんだけど、リークに来るんでしょう。」
彼のクスクスという声を聞こえてくる。何が面白いのかは謎だとしか思えないのだ。
「気取った名前だなと思ってな。いくら気取ったところで何も変わることないしさ。それにリークをあの保育士を目指している人にさせるんだろ。負担が大きすぎて耐えきれないじゃないのか。ほぼ社会の底辺みたいなところで研修したって何も役に立つはずがないよ。期待なんてしないのがいいな。」
彼女にとっては痛いところを突かれたが声だけは平常心に見せようとしたが、出てくる声はかすれていた。
「わかっているわよ。研修はあくまでも箸休めみたいになることくらいね。いいの。仕事をしてないみたいにならない。」
彼の苦笑じみた笑いが聞こえた。それは何処か乾いているのを感じた。
「刑事なんて何処にほっつき歩いたってわかりもしないさ。あくまでも前提の話を繰り返すだけだ。それに今の課なんて自由にしろって言われているみたいなものだからな。もうすぐ着くから切るぞ。」
強引な切り方に愚痴や文句をこぼしながら電話を置いた。南はいずれこんなところを離れていくだろう。理想に近いところでリアルに飲み込まれながら・・・。外から騒いでいる声のほうを見た。くたびれたスーツに疲れ切った顔を添えていた。その顔が笑みに代わるのには時間はかからなかった。




