現状維持か
夕飯を作るために来たのかエプロンを手際よくつけている。試食をさせてくれるのかと待っている姿のように映っている。
「園長、何がいい?」
「私じゃなくてこの子たちに聞いて。達樹が来て何を作ってくれるか楽しみにしているんだから。」
その一言でがやがやといっている。締りのない言葉の数々に収集がつかなくなってきた。止めると関係性が崩れるのは嫌なのでまとまるのを待った。最年長なのかけだるそうにまとめた。高校生までいられるのだ。遅くに帰ってきて騒がれるのは嫌だろうから。最終的にから揚げになった。子供たちは落ち着きがあるのかないのか喧嘩をしながら待っていた。
「大変だな。俺には無理だよ。」
「何言っての。前まで此処に交じっていたでしょ。貴方たちのころは戻ってくる人なんていなかったから大変だったの。けど、今は少し楽なっているの。有難うね。」
彼は照れ臭そうにしながら下準備をしていた。から揚げだけでなく多くの料理が並ぶので豪華さはいつもと同じだ。机に囲まれている。ガラスの向こうに見えていない世界があるのだ。空は雲一つもない。
「達樹、信之に相談できなかったから相談していいか?」
「わかったよ。待ち時間な。」
子供たちの相談員のようだ。騒がしいほほえましい家庭に映ってもいずれどう倒れるかわからないのだ。あわただしい一日は終わるのだ。シャワーを浴びた。達樹は缶ビールを出した。
「それで話すことって何かしら?」
「信之は来ているのか?」
「来たわよ。事件を追っているみたいだから神妙な顔していたけど。」
プルタブのあっけない音をさせている。南も遠慮がちに座っている。ビールを飲むわけにはいかないのでペットボトルの茶を飲んでいる。
「あいつは事件があると此処に来てもそうか。事件を抱えないときなんてないからな。刑事ってそんなものだろうな。」
「それより店はどうなの?繁盛しているの?」
達樹にとって痛いところを突かれたのか苦い顔をしている。それからすぐに笑った。全てを打ち消すような受け入れてしまったかのような笑顔だった。
「そこそこだよ。固定客もついたし、手の込んだものを作るけどそれはあいつだけだから。店の名前で苦情は言われるしさ。」
「それは達樹は悪いんでしょう。信之がかかわったみたいな名前にしたからよ。」
「いったいどんな名前にしたんですか?」
小さな蚊のような声で南がつぶやいた。聞きそびれそうなほどだった。つついてはいけないと思っているのだろうか。




