道路の乾いたひび
警視庁に戻るのが億劫だとしか思えなかった。他人のことを評価する必要などないのだと割り切った。捜査一課にいたときは捜査二課に警察学校の時から仲がいい奴がいたが、未解決事件捜査課になって会うことをしてくれないだろう。目の前にかけられた肩書のほうが輝いて見えているのだろうから。公園から離れるほうがいいと思ってとぼとぼと歩道を歩いていく。ママチャリで脇を爽快に走って行った。その自転車はまるで我が道のように歩行者にぶつかりそうになりながらいなくなった。スーツから黒い手帳を出した。書き込んだことを眺めた。
「立花。此処で何をしているんだ?」
「柴田、お前こそどうして?」
柴田は警察学校の同期で仲が良かった。異動になったことくらい風の噂で知っているはずだ。自分の小さく見える背中を見せたくなかった。
「俺は大手企業の裏金の確認で近くに来てたんだ。藤田製薬株式会社はもうしばらくしたらつぶれるだろうな。内部告発があったってな。お前の親父のことが上がってきてもう一度藤田を狙っているんだ。取締役とか役員、会長は捕まるんじゃないかと思ってそれの報告を兼ねて捜査一課行ったらお前がいなくてな。そしたら未解決事件捜査課に行ったと聞いてな。いいとこついたなと。」
「俺を侮辱しているのか。未解決事件捜査課なんて捜査一課のお荷物なんだぞ。」
ふつふつと沸き上がったお湯を立花はかけられたかった。最低な人間だと思ってしまう。きっと会いに来なくなるだろうと感じた。
「ごめんな。お前の癪に障ったか。俺は捜査一課にいる時より自由になるしお前にあっていると思ったんだ。浅間さんが申し訳なさそうにしてたぞ。本当はお前の好きなようにしてもらいたかったみたいだ。それを前いた人に打ち明けたら嫌がって会社も見つかってもないのにやめたらしいんだ。今いる黒崎は了承して入って来たみたいだ。もう此処らをほっつき歩くのはいいんじゃないか。」
柴田の霧雨のようにやさしく包み込んだ。柴田は肩書を関係ないというのだろう。確かに捜査一課は組織がと言い訳じみたように権力者にあっさり負けていたが、今の課で暴れまわっていいのだろうか。
「本当なのか?」
「俺が嘘を言うと思うか。俺はお前の詳しいことも知っている。むしろ俺はお前と組みたかったよ。組織にへっぴり腰の奴らなんかと一緒にいるのは嫌なんだ。性が合わないのだろうな。俺を頼れよ。俺は喜んでやるぞ。」
柴田の手が立花の肩をもむようにつかんだ。変わらない警察学校の時からの癖だ。相変わらずだ。




