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泣いた烏  作者: 実嵐
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幸福とは・・・

車から降りてくる彼女の慌てている様子は何かと聞かずとも知っている。浅間は落ち着いているように見せているのではないかと思った。彼は今も上司だ。圧力を嫌っている部下にとってはいい上司である。弱気権力は無力なり、力なき権力は暴力なりといいたいと思っているのだろう。

「どうして2人とも此処にいるの?」

「柴田さんがすぐに行ってしまうと不安が残るといったので待っていたんです。立花さんは一筋縄ではいかないことは貴方なら理解済みですよね。」

黒崎の饒舌で少しの慌てていない姿に落ち着きを取り戻している。浅間は柴田と話をしていた。ある程度の知識はもっておきたいのだろう。

「では、行きますか。」

柴田の力強い声に引っ張られるようについていった。受付には人はいなかった。貸し切り状態であるのは確かだ。沈黙が漂う空気に緊張感が混ざりこんでいた。ホールの案内板を見つけると何処にいるかの検討をしているのだろう。それもいらないのか大きなホールに向かっていくだけだった。重厚感だけは一人前のドアを開けた。

「本当に此処にいるんだろうな。」

「浅間さんでも不安になりますか。此処は昔、藤田製薬会社の社長が講演会をした場所です。立花は動かない爆弾を作り警備員なり、警察なりに殺されることを選ぼうとしたところです。」

舞台には遠目からよくわからないが人が見えた。慌てて階段を下りている彼女はこけた。それでもすぐに立ち上がった。彼女は大きな声を上げた。

「死んでる。たっちゃんと友達が死んでいる。」

わなわなした声をしていた。浅間も少し焦っていくように小走りになった。

「柴田さん、遅かったんですかね。」

「遅かったのは全てだ、計画を早くにわかって止めれていればこんなことはならなかった。それ以前に警察が見え透いた嘘をつかなかったり、誠実な対応をしていれば起きなかったことなんだ。」

彼女は嗚咽。すすり泣くなんてできなかった。明らかに愛していたのだろう。


  数日後、警察は未解決事件として大手企業の爆破事件を処理することになった。それは証拠があまりなくホシは見つからないからだ。それに加え、過去の杜撰な捜査に対応がとられてしまっている。捜査一課も浅間が兼任のままやることになった。柴田は二課のままなのだが、早く帰れる日にはラポールに行くことにしている。黒崎と同じだ。立花への恩を乗せてと。そして2度と同じことが起こらないように水際で止めたい、止められたらと思っている。園長も喜んでいる。子供たちを見守ることで贖罪ができたらと思いながら。


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