パズルのピース
「何か言ったかしら。」
「いいえ、それより元夫の田代さんの印象はどうだったんですか?」
スナックを営んでいることもあって噂などは散らばっていただろう。本人の感じたことを知りたかった。俺は立ったままであることを忘れた。
「そうね。嫌いだったわ。はるちゃんが一生懸命働いた金を奪い去るようにとって行っていたの。はるちゃんは警察に相談したのよ。口先で対応は最悪よ。下手を言えば貴方が悪いじゃないかという人もいたそうよ。それじゃあ人を守ることなんてできないわ。」
ふつふつと赤く染まるのを見た。いら立ちを見せないようにしないようにしていかないと商売にならないため、演技が身についたのだろう。
「よく話は聞きますよ。プライバシーだとか言っている時代に情報を流す奴がいることもです。引き金を引いているのに謝罪どころか言い訳をし始めるのは組織が腐っている証拠だと思ってます。」
「やっぱり貴方は警察ではあるけれど、何処か違うわ。親身になってくれているのかは私は判断できないけど。貴方なら話すからまた時々くればいいわ。」
気に入られた理由を問うより事件を説く真相が見えてきそうだった。女性が遠くを見つめてきた。
「あぁ・・・。」
何処かのねじがはまったように見えた。かすかにかすんでいる空から見えるのは何だろうか。未来を問う前にかき消された叫びのようだった。
「亮君と仲が良かった子がいたわ。確か小学校、中学校、高校と一緒でね。部活も一緒でよくいたずらもしていたの。」
「名前わかりますか?」
「・・・青柳玲だったはずよ。その子、殺人事件を起こして裁判して死刑になったのよ。そう見えなかったのに・・・。高校も・・・ね。」
楽しそうだった顔が暗く染まった。彼自身が変わってしまった理由があるのだろうか。大きな事件なら知っているはずだ。何故、知らないのだろうか。聞いていなかったのだろうか。彼女が当時の新聞をもって来た。
「この記事よ。残酷だとは思うけど、私には青柳玲の叫びのようにしか見えないのよ。」
「彼の母親は縁を切ったそうよ。家族がたたかれるだけだからね。文通も本人も望まなかったけど、一つだけ言ってたわ。亮が見つかったら知らせてほしいって。」
青柳亮が見つかったら知らせる?いなくなったのを知って起こしたのだろうか。終わりがいつ来るかわからないのに心配があるのか。
「可笑しいわよね。自分の立場が分かっているのって。起こした理由が私には後付けにしか聞こえなかったの。」
後付けの事件の内容を作れるのだろうか。




