恨みの果ての果て
車を走らせているが、せかされている心と動いている車の遅さに落胆してしまう。柴田はいら立ちから貧乏ゆすりをしてしまった。信号待ちでさえ待てれないのは・・・。
「変わりましょうか?」
言いにくそうに黒崎が口を開けた。代わったところで何も現状変わりえないのだ。
「構わない。俺はその場所についても変わらないんだ。後悔が渦巻いているのに無力なんだからな。」
「それは立花さんがかかわっていると思っているのですか?」
「そうだ。さっき、鑑識に行ったら出るとは思っていない人間の指紋が出てきたんだ。かなりのことだ。何処についていようが疑惑が付くのだ。」
柴田の言葉で気づいたのだろう。黒崎の口はあいたままとなった。車を走らせるしかなかった。時間との闘いだ。希望なんて浮かれた言葉じゃない。
「青柳亮ですか。生きていることが証明されたのですか。黙っていたのは共犯ってこと・・・。」
「あいつの心の中にはな、警察を恨み、憎む心が存在する。それは過去にある。聞いたことないだろ。」
彼はうなだれるようにうなずいた。黒崎に知らせるのは酷だとわかっていても伝えないといずれわかるなんて都合のいい言葉吐き出したところで時間は変えられるわけじゃないと思った。柴田はぽつぽつと話し始めた。懺悔のように。
「立花の親父は藤田製薬会社の研究員だった。おふくろは近くのレストランに勤めるシェフだ。ある転機が起こるまでは楽しく暮らしていた。」
親父は家庭を顧みない生活を送るのが嫌になりやめようと考えていた。それを止める人なんていない。それは子供が生まれるのに厳格の父親という性格でもなかったこともある。子供が生まれる数週間前に特別研究員の主任となった。光栄だと思って受け入れた。少しの間は誇りがあったのかもしれない。けど、部下に当たる大学生のアルバイトと称されてはいってきていた子から伝えれた。暴力団の殺しの手伝いをさせられているのだと。それ知って会社の対する信頼を失った。子供も生まれていたが隠すことを選んだ。すぐにでもやめたいが理由がないと思って特許を取って喫茶店をしようと思った。ばれては困ると思って弁護士に隠してもらうという都合をつけた。仮面をかぶった会社に振り回されるのが嫌なのだ。部下を守るための取り調べを受けた。それでも深まるばかりだ。店舗兼自宅の場所を探していた帰りに電話があった。どうせ会社によるのなら話したいことがあるからといったのだ。そこで悲劇が起きた。




