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おばさんの覚醒

 わたしはまどろみの中にいた。

 そこはすごく曖昧でここちのいい場所だった。

 どれだけすぎただろうか、ひそやかな声にわたしは呼ばれた

  それはかぼそく小さな声であったけれど「お願い、、助けて」と言う声に、、。




 「あ、たた」

 目が覚めるとそこは欧州調のホテルのような場所だった。

 「え?何ここ?」

 周囲の様子を確認するが、記憶にない。

 旅行でもしてホテルに泊まった?

 などと検討違いのことを考えるぼーっとした頭に、走馬灯のごとくに記憶が流れ込んだ。

 それは異国の国の男としての人生の記憶。


わたしはこの間まで平凡なパート主婦だったはずなのに、この男の記憶はなんだろう。

 しばらくすると自分の身体に異変が起こっているのに気が付いた。


 ふくらんでいた胸部が平らになり、そのかわりに下半身に突起が、、。

 手もぽっちゃりしたおばちゃんの手から細くても骨っぽい手になっている。

 それに目のはしに見える髪の毛が、染めた記憶もないのに金色なのだ。

 おばちゃんでもこんな色に染めてる人いないよ。

 紫に上品な感じでのおばあちゃんはいるけど、この年で金髪はないわよ。


 いろんなことを確かめるために私は鏡を見た。

 そこには白人男性、推定年齢二十代前半の超美形の男が映っていた。

「はあああああ」

 いつもの馴染み深いおばさんの姿はどこにもなかった。


 一瞬頭が白くなりかけたけど、もしかしてあの男の記憶は私の記憶だったの?

 鏡の前でいろんなポーズをしたけれど、自分のようだ。

 夢かそれともボケがきて幻覚かとも思ったけれど、窓を開けてみた家の様子といい、いろんなことをテストして、これは幻覚でもボケでもないと理解した。


 もしかして、転生。

 娘が夢中で読んでたので何冊か影響で読んだことのあるラノベの転生ではないのかと思うと、なぜかストンと納得がいった。


 いやこんな現象なんだから何か理由をこじつけたいではないかと言う心理の現れかな?

 一応転生として、これはただ単に生まれ変わったのか、何ものかの意図なのか、いずれにしても前の私の人生が気が付かないうちに終わったのだと分かって、ちょっと愕然としたのだった。


 しんみり自分の死を認識していると、この世界の記憶がだんだん組み合わさっていくとなんとなく自分の状態が分かった。


 「赤ちゃんでの転生覚醒ではないのね」


 年齢は23歳でこの世界での貴族男子である。

 アシュレイ・ジュリウス・メイフィールド・サクストン公爵!なんと王弟である。

 結婚はしてたけどこの前奥さんが亡くなって、荒れまくったヘタレボンボンのようだ。

 子供もいるのに酒浸りとか、本当恥ずかしさに身もだえする。

 やっぱ20代の若造と百戦錬磨のベテラン主婦では気概が違うのだ。


「さて、もう一つ確認ね」

 わたしは再度鏡を見た。

「この美貌半端ないんですが?」


つい声がでてしまう記憶上こんな美形を人生でみたことはなかった。

 それも自分がこんなに美しいとは幻でも見ている気分になる。

 前世は平凡で、尾行なんかにもってこいの埋もれた平均顔だったので、くらくらする美貌に茫然となってしまったのだ。


 プラチナブロンドの少しウエーブがある長髪に、目は青で方向によっては明るい青から深い青になると言う神秘的な瞳。

 肌は真っ白でそばかすとか無しの真珠のような内側から輝く白さ。

 顔立ちはまじで黄金比率かも?と思える某3Dアクションホラーゲームの美形主人公真っ青の美形ぶりに、自分の顔なのにじっくりと観察してしまった。


「私って美形じゃん。なよなよしてるとか、暗いとかヒキニートとか?陰口たたいてたアホ貴族の男どもめこの美貌に嫉妬したわけだよね」


 アシュレイはこじれた性格で難儀な奴なのだが、原因は学生時代のいじめがあったようで、同年代の男達はみんながたいがよく精悍なので、綺麗系のアシュレイを学生たちが密かに馬鹿にしていた風潮があった。


 ひげが生えにくいのも難点なのよね、この世界の若い子はひげ無しなんだけど、大物貴族の重鎮などはみんな口髭とか生やしてるんだもん。

 ひげのないアシュレイは影で女神様とか言われてるんだよね。

 でも、日本人の私からすれば、あの鼻の下のひげとか、口の周りのひげないわー。


「今度の舞踏会とかでさ、ひげ無し美形の威力を思い知らせてやるわ!一部そういうごついの好きな女の子もいるだろうけど、アシュレイに圧倒的需要があると思わせ、ひげ無しを流行らせるわ」

おばちゃんの魂には折れると言う文字はない。


 アシュレイは学校時代は王弟という立場上馬鹿にされるわけにはいかないが、正面から喧嘩もしにくい。あたらずさわらずのスルー我慢のせいで、卑屈な根暗ヤンデレになってしまったようだ。


 その上アシュレイは自分が綺麗すぎて、普通の女の子は目に入らない。

 前世の自分なんか本当にモブどころか透明人間にしか思わんだろうなと思う。

 だからなのか従妹であった妻のレイチェルには異常な執着をしめしていて、彼女だけが友達、家族、恋人を兼ねていた。ま、ぼっちだよね。


 レイチェルはアシュレイよりはおちついた感じの美人だけど、少し年上ということもあり、優しく気配りのできる人だったので依存しまくっていた。

 その妻が身罷ったので、めちゃくちゃ荒れてしまったのだ。

 子供がいるってのに何やってんだかとあきれてしまう。

「こんなんじゃレイチェルも浮かばれないって、ほんと何してるのかなアシュレイ!」

などといいながら鏡の中のアシュレイをしかりつけるけど、美形な自分にうっとりしてしまう。いかんわー。







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