死ぬ勇気を持てなくて良かった
あくまでも、フィクションではあるが、自分自身の経験を投影することもある。
『イチゴジャムとマーマレード』表題は、甘いジャムが好きな子どもの時代から、ほろ苦いマーマレードが好きになる、大人になって行く過程を比喩している。
《序章》
終戦の混乱期もやや治りつつあり、町の社交場、ダンスホールでパパとママは出会った。しがない行商人の親を持ち、ハーフであるために戦時中大変苦境な学生時代を過ごしたパパ。歯医者の令嬢として何不自由なく過ごしていたママ。
当時、ママにはパートナーがいたけれど誠実なパパのアプローチにほだされて、以前の彼とはさよならをした。
その頃警察予備隊にいたパパにも、それっぽい相手がいたけれど、アバズレで計算高く、パパの上司と出来てしまったのでお別れした。その女は将来的にとても厄介な事件を持ち込んでくる。
4年の歳月の間、けして体に手を出さなかったパパ。ママも本当に大切にされていることがわかり、晴れて夫婦になった。
結婚式を挙げて、間も無く神の思召しにて、百合が誕生する。そう、私である。
百合が生きるために、地獄にも落ちて行くけど、心や体が死に目にあっても、生きていればこそ、いつかは幸せを感じ、安らかに召されるのではないかと想っている。