新家という家
笑顔の子供の横を通り抜ける。
でも、この子も数年先には・・・
さっき、高校生の目が頭を横切った。
白い目だった。
学のない宅配員、という蔑みの目。
「そんな仕事をして、夢はないのか」と言いたげな目だった。
荷台から小包みを取り出す。
表札を確認した。
『新家』
やつには読めないだろう。
俺を蔑んでも、その程度の学だろう。
『にいのみ』と読む。
俺には、この名字の中学の同級生が数人いた。
でも、この辺には一軒しかない。
読み方を知らないだろう。
そういうことなのだ。
だから、俺のことも知るまい。
これでも小説を書いている。
どんなに金がなくても、書いていく。
それが俺の信念だ。
親が「もう止めろ」言っても書き続ける。
ヤクザに脅されても、書き続ける。
ISのテロリストに拉致されても。
俺を揺るがすことはできない。
絶対に。
ふと配達証に目が止まる。
『新家』。
いや、その上だ。
『しんか』?
ぐっと小包みを引き寄せる。
間違いなく『しんか』。
俺の生まれた町の『新家』さんは全て『にいのみ』だったのだろうか。
俺の自信は崩壊した。