ルーナの受難
あらすじにも書きましたが、矛盾や可笑しいところがあれば指摘していただけると幸いです。
「そういう訳だからさ、僕と別れてよ。ごめんね?ルーナ。」
何がそういう訳だよ。私は心の中で盛大に飛び交っている罵詈雑言をぐっと押し込め。一言
「わかったよ。アルが幸せなら、私は身を引くよ。」
自分自身の言葉に鳥肌をたてながら、目には涙をそれとなく浮かべ、私、貴方の幸せを願います!的な顔をする。
「ごめんね、ルーナ。本当にごめんね。僕は真実の愛を手に入れたんだ。」
気持ち悪っ!そういうことを物語以外で言うやつ初めて見たわ。
「ううん。気にしないで、私は貴方が幸せになるのを願ってるから。さよなら。」
そう言って私は、背中を向けて走って逃げていく。奴には涙を見せないように逃げる幼馴染にしか見えないだろうな。そう見せているんだけどね……
これだけ見たら、何となく伝わるだろう。何、何処にでもある話だ。
幼馴染みと付き合っていた彼、しかしある女性と出逢い、真実の愛がなんなのか知る。
こんな感じだよ。本当によくある話だろう?だけど、現実にはうまくいかないと思うんだよねぇ。
ん?何故そう思うのかって?それは奴があまりにも馬鹿って言うところだ。
それは私達の身分に関係している。私は平民、彼も平民、そして彼が懸想しているのは……貴族。
私は生まれて14年が経つけど、平民と貴族が結婚したなんていう話は聞いたことがない。ていうか、そもそもこの国では前例がない。駆け落ちしたという人達も何人かいるが、大体貴族の方が逃げ帰ってくる。それは平民と貴族の価値観の違いからだろう。
無駄遣いをせず、質素倹約で食べられるものなら虫でも食べる平民と、温室育ちで自分一人では何も出来ない貴族。そんな二人が駆け落ちしたところで、貴族の方が耐えきれない。お金がない、ということは贅沢が出来ないのである。貴族は自分がしたいことが出来なかったり、又は駆け落ちした相手のために何かしてあげたいが何も出来ないという歯痒さから帰ってくるのだろう。
しかも、この国は駆け落ちすることを容認しているのだ。まぁ、この国が実力主義であることが関係しているのだろう。つまりは、そんなことも考えられない馬鹿共はいらん。的なことだろうね。
まぁ、以上の点からあの二人は上手くいかないだろうね。てか不幸になれ!私がこの4年間どれだけ奴のお守りをしたと思っているんだ。無駄にルックスが良くて無駄に正義感があるから困っている女性がホイホイよってくる。しかも、その女性は重い事情を抱えている。そのとばっちりに私も巻き込まれる。しかも奴は、話を聞かない、勘違いが多い、自分の言ってることが正しいと思っている。というアホの詰め合わせだ。こんな奴の尻拭いをしているうちにいつの間にか奴の恋人になっていた。何故だ、解せぬ。
ふぅ愚痴ったら少し心が軽くなった。さて、休憩時間はもうすぐ終わるから、料理屋の仕事を再開しますか。
そんなことがあって数日が経った。今日は私の15才の誕生日である。誕生日って言っても仕事はある。今日も何時ものように料理屋で配膳や皿洗い等の雑用をする。
厨房で皿洗いの仕事をしていると表がなんだか騒がしい。なんなんだろう?気になってはいるが表に出ることは出来ない。勤務中だからね。でも本当に何があったんだろう。すると、女将さんが慌てて厨房に入ってくる。
「ルーナ!あんた何やってるの!早く表にきて!」
と私の手を引っ張る。何がなんだかわからない内に料理屋の入り口まで来る。
「ルーナ、くれぐれも失礼のないようにね?」
一体なんなんだろう。とドアを開けて外に出る。すると、私を出迎えたのは大きな馬車から道を作るようにずらぁーっと並んだ近衛騎士だった。ん?近衛騎士?……なんでここにいるの!?近衛騎士と騎士には大きな違いがある。それは、制服だ。普通の騎士が青色なのだが、近衛騎士は赤色なのだ。何故赤色かというと、血の色が目立たないようにする。という噂なのだが、それは置いといて、何故近衛騎士がここに?近衛騎士は王族専用の護衛騎士なのに……。?、??ま、まさか……この馬車って!
すると、ドアが近衛騎士により開かれる。そこから出てきたのは、金色の長い髪を束ね、蒼い瞳に甘いマスクをもった、麗人。一度だけお祭りの時に見たことがある。この人は
「フランシス殿下の御前である。控えよ!」
私は慌てて膝をつく。フランシス殿下って第2王子だよね?なんでここに?
「ルーナ、顔を上げてくれないか」
何故、私に声をかける!?しかし、殿下の言葉に逆らうことが出来ない。ゆっくりと顔を上げる。すると、目の前にフランシス殿下のお顔が!?ちょっ!近いです近いです!
「ルーナ、私と婚約してくれないか?」
は?いやいやいやいやいやいや!なんで私!?私まだ14歳……じゃないっ!15歳からは婚約出来るんだった!それでも私には拒否権がない。それに、貴族と平民の結婚は前例がないと言ったが王族と平民の結婚は前例があるのだ。
先程も言ったが、この国は実力主義である。稀に、平民の中でもかなり優秀な者が出てくる。例えば、優秀な発明をしたものや特異な異能をもったものだ。それらは王族が取り込むのだ。その知識や血を、次代の子に残すために。王族は常に優秀でなければならない。それが王族に課せられたものだ。王が優秀であるから、優秀な貴族達がついてくる。そんな、危うい国なのだ。
ということは、王国は私の能力を把握しているのか。私の、完全記憶の能力に。
「ルーナ、返事をしてくれないか?」
どうしよう。いや、選択肢はないけど……ていうか、初代国王!なんで平民と王族が結婚できるようにしたんだ!なんで前例を作ったんだよぉ!あーもうこうなったら自棄だ!
「謹んで、お受けいたします。」
その後、フランシス殿下に徹底的に口説かれて、王国一のバカップルになったり、フラれた奴が私と復縁しようとして私の夫に国外追放されたり、夫に愛され過ぎて、監禁されてしまうことを、私はまだ知らない
お読みくださりありがとうございます。