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 予鈴の音が響く中、私は売店の前で一人の少年と見つめ合っていた。いや、正確に言うと私が一方的に睨みつけているのだから、そこに恋愛的な要素は無い。

 まさか一日に二度も使うだなんて思ってなかったけれど、胡桃色の吊り目を最大限に見開いてお見舞いします。……檸檬ビーム!

 私の目の前で申し訳なさそうな表情を浮かべる人物――青縁メガネの地味な男子かと思っていたのに、意外とやり手な外柔内剛野郎委員長こと近藤君!七割くらい君のせいで昼食がギリギリまで摂れなかったんだぞ!どうだ、怖いか!

「あ、あの。さっきから独り言漏れてるし……。しかも僕宇野うのだし……」

「え?UNO?」

「いやそれ発音的に某カードゲームだから!」

 ふむふむ……こやつさっきから私の睨みにも言葉にも狼狽えない。優しげ……というかヒョロいのに!やはり外柔内剛なのね。


 そういえば宇野君は何故屋上の扉の前にいたんだろう?

 不思議に思った私が売店の余り物のパン(宇野君がお支払い)を頬張りながら問いかけると、先生から資料運びを頼まれたので私を探していたとのことだった。

 そして屋上に辿り着いたらしいが、声をかけようとしたところで学年一の美少女であるいろはちゃんと私の壁ドンに遭遇してしまったらしい。

 秘め事の邪魔をするのは躊躇って立ち去ろうとしたが、資料運びも大切……と悩んでいるうちにいつの間にか最後まで盗み聞きをしてしまったそうだ。いやそれ完全にアウトだから!しかもレズじゃないよ!


 でも、私やいろはちゃんが転生者だと知られてしまった今、宇野君を野放しにする訳にはいかなくなった。もし悪用されて学園中に噂が広まれば、私は主人である琥珀様と引き離され、周りからイタい目で見られ、違った意味で学園生活終わりが訪れてしまう(遠い目)。

 せっかく敵がいない状況にいるのだから、『赤&青』ルート、つまりいろはちゃんの進んだルート以外の攻略キャラともお近づきになりたい!イケメンで目の保養を!そしてあわよくば誰かと……ンヒヒヒ。ちょ、宇野君ドン引きするなー!

 とりあえず、話を聞かれていた点で宇野君には貸しがある(?)のだから、誠に申し訳ないと思ってるけど……切実に思ってるけど……協力してもらおうと思う。


 実は、ゲーム内設定でいろはちゃんは努力家で頭がとてもいい。特別クラスに入れるくらいだしね。しかし、彼女は数学だけが苦手であるため、攻略キャラにそれを教えてもらうイベントがあるのだ。まあ、苦手といっても70点は楽々取りますよ(怒)。

 また、数学以外は得意なおかげか、恋愛では鈍いのに事務的な部分で攻略キャラの支えになってあげられることもあり、そんな一面にもイケメソ達はクラっときてしまうのだ。

 もちろん私はいろはちゃんのように才色兼備ではない。数学だけじゃなく他の教科も得意じゃないので特別クラスから消えちゃうのも危ういくらい。今回ばかりは乙女ゲーム補正に頼ってやる!縋ってやる!


 ということで、せっかく攻略キャラの得意・不得意分野について理解しているのに、これじゃあイケメソの支えになるどころかお荷物に!というか絶対見向きもされない可哀想な私。

 ……しかーし!なんと私には宇野君という強力な助っ人がいるのであーる。彼は実力で委員長に推薦され、且つ高校生最初のテストで満点を取っちゃった凄いやつなのだ。

 あまり勉強のできない私でも天才宇野君の指導によって頼り甲斐のある子になれれば、きっと攻略キャラとお友達になれるはずなのだ(確信)。

「かくかくしかじか……ということで、宇野君協力よろしく!一足先にありがとう!」

「いやいやいや!何一人で解決しちゃうんだよ!」

 ほくほく顏の私を一瞥し、深くため息をつく宇野君。これで貸しは無くなったね!おめでとう!と笑いかければ、彼もぎこちなく頷いた。今まで地味男とかUNOとか言ってごめんね!

 それから、彼に私の持つゲームの記憶について話すと、時々首を傾げながらも真剣に聞いてくれた。く、いい奴……。


 その後、資料運びで授業に遅れることを先生に伝えに行った。が、案の定今から運びに行くのかよ、といった表情で先生に睨まれた。

 しかし、宇野君の優等生スマイルで先生がようやく首を縦に振った。普段から真面目だと信用されるのね!悔しいです!

 私はハンカチを噛んで悪役っぽく悔しがってみようしたが、生憎ハンカチを家に忘れていた。女子力低い!キーッ!


 それから、情報交換のために(一方的)連絡先を交換しようとスマホを出すと、宇野君に凄く驚かれた。

「この高校、携帯の持ち込みは禁止だよ?」

 返って来た言葉に、私の方が驚いた。まさかそこまで真面目だとは思っていなかった。電源を切っておけばバレないし、みんなそうしているものだと思っていたから。

 私が感心して「座布団二枚!」と笑えば、宇野君は「十枚集まったら何かくれるの?」と笑い返してくれた。メガネの奥で細められた目にちょっとキュンと……すると思った?ケッ!

 その後、風紀委員にスマホが見つかると二者面談がどうたらこうたら……という話を教えてもらい、気が引き締まった。進学校ってすごいのな。

 でも私も、「宇野君のその前髪こそ風紀委員に叱られるんじゃない?」と忠告させてもらった。

 軽く返事をしながら前髪を弄んだ宇野君だったが、その顔絶対切る気ないだろ!


まあ、なんだか今日は宇野君との距離が縮まった気がする。

 この調子で攻略キャラともお近づきになるぞ!と意気込めば、宇野君は呆れたようにフッと笑った。……なんだよその笑い!

 こうして、サポートキャラを手に入れた私は、イケメソとの甘い日々を想像して一人ほくそ笑んだ。




 睡眠タイムという名の午後の授業、そして帰りの挨拶が終わると、部活に入っていない私はささっとカバンに荷物を詰め始めた。

 高校生といえばやっぱり部活動だけど、中学生時代に美術部の幽霊部員だった私にとっては、部活動はあまり重要で無かった。

 それより、放課後に起きるイベントを見たいのだ。まあ、肝心のいろはちゃんが攻略をする気がないのでそれも叶わないのだが。


 ……噂をすればなんとやら。

 片手にスマホを持ったいろはちゃんが、「LIME交換しよう!」と笑顔で駆けてきた。

 思わず「いいよ!」とスマホを出しそうになるのを抑えて、ちょっと上目遣いで「風紀委員に見つかったら二者面談だよ?」と笑う。

 なんだか今日は馬鹿の一つ覚えのようにこればかり言ってしまいそうだ。

 

 しかし、そこで私は気づいてしまった。

「あ、あれ。いろはちゃん風紀委員じゃん……」

 私のほうが一枚上手だったわね、と勝ち誇ったような笑みを浮かべるいろはちゃんに、思わず「ひぎー……」と声が出る。

 覚えてなさい!とでも言うように私が逃げ帰ろうとすると、「LIMEは?」と催促された。あ、忘れてました。


 そして、家に帰ってからふと思ったこと。

 ……風紀委員があれじゃあダメだろ!一枚上手とかの問題じゃないだろ!


 そう言いながらも、私は今日もスマホをカバンに詰め込んで家を出る。

お読みいただきありがとうございました!

今回少し短めです。

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