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戦乙女

 朝の支度をひととおり終えて家を出る。制服の背中にはあいかわらずちょっとした焦げがあったのだが、穴が空くほどではなかったので私は気にしないことにした。現代の乙女はその程度のことではそうそう制服を買い替えようなどとは夢にも思わないものだ。乙女よ、倹約家であれ。ゲームを抱くのならば。


 私はとにかく家に居たくなかったので結構早く家を出た。家にいたらゴチャゴチャと余計なことを考え続けて頭がパンクしそうだったからだ。歩いていれば、きっと頭がすっきりするだろう。


 しばらくすると血の巡りがよくなったからか、だんだん頭の整理がついてきた。何も難しい事はない。

 学校の帰りに警察署へ行こう。そしてそこで昨日会った出来事を話すのだ。

 ゲーム店に行ったこと、強盗に人質に取られた事、バイクの男に連れさらわれた事。

 どうしてさらわれたのか、そしてどうして無事に帰ってこれたのか。これについては特に心配するに値しない。犯人にしか理由は分からない、と答えよう。


 結局私にもよくわからないのだ。どうして鳩屋が私をさらったのか。そして約束をさせたのか。

 警察も深く考えることはないだろう。まさかさらわれた少女が「言わない」だけのことを。

 少しだけ鳩屋に悪いかな、と思うが冷静に考えれば彼は「誘拐・脅迫」という立派な犯罪を犯しているといえなくもない。これはもう私の手に負えることじゃない、スマン、鳩屋。


 あー、すっきりした。


 私は思い悩んでいた事を精算した気になって、鉛のように重かった体が急に軽くなった。あまりの軽やかさに思わずスキップしてしまう程だ。

 そーれ、


(はっ!しまった、こんなところで……)


 私の体はスキップの一歩目で急ブレーキをかけることになった。

 はずみで前のめりに倒れそうになるがなんとか体を突っぱねて耐える。

 人影だ、人影がいたのだ。いい年した高校生のおなごがスキップをしようとした前方に、電信柱の影に隠れた人物がいたのだ。

 私は恥ずかしさのあまり「とっさに自分のミスに気付いたが既に遅く大ダメージを受ける寸前の戦士」のようなセリフを心の中で吐いてしまったではないか。

 きっと今から私は心に重大なダメージを負って学校に行きつく事になる。全く、なんて日だ。ちくしょう。


 電信柱に寄りかかっていたのか、その人物はのっそりと影から現れる。その人物は、私が昨日会った人物だった。


「鳩屋?」


「よお、また会ったな」


 ここは会えたことを喜ぶべきか、よくわからない。

 とにかく、これで私はスキップについては気にしないでいいわけだ。彼のスルースキルについては定評があるからな。


 鳩屋の服装はいたってスタイリッシュなお兄さん、といった感じだった。グレーのジャケットやら、とんがったブーツやら、腰に巻いたストールだ、とか変わったデザインのパンツなどだ。あと、そうだな。シルバーのアクセをつけていたかな。まぁ、なんていうか全体的にオサレ?みたいな。


 彼は私の華麗なつんのめりを見ても全く心が動かなかったようで平然と話しかけてきた。ええ、現実ではよくあることです。

 乙女ゲームの攻略キャラのように「おっと、……大丈夫か。まったく、お前という奴は。危なっかしくて、目が、話せねえ、よ(はあと)」という展開など全くない!シュガーレスのキャンディーみたいなものさ!キシリトールも入ってるってか!(いかり)


「警察、スルーだったみたいだな。面倒なことにならずに済んでよかったぜ」


「見てたんだ」


「ああ、俺もうっかりしてたけど、何も話してないみたいだし満点合格ってところだな」


 おっと、ちょっと聞いておきたい事があったはずだ。


「もし、その……鳩屋の事話してたらどうなってた?」


「どうもこうも、別にしょうがねぇんじゃね?あの状況じゃあなぁ。あ、でもあの能力の事は話したらアウトな」


 よ、よかった……。でも、普通は自分の事隠しておきたいんじゃないかな鳩屋。

 どうやら鳩屋はさらにクールな方だということが新たにわかった。


「ああ、後な。これを言いに来たんだけど」


「何?」


「もうこの件については関わらなくていいから。お前はこの件については一斉関与しなくてもいい。全部こっちの方で済ますから、お前は何もいうな」


 わっつ?


「ちょっと、何ソレどういうこと?国家権力とか、ひねりつぶしとかそういうこと?」


「さぁーな」


 鳩屋はひらりとブロック塀を乗り越えて去って行った。さくっと入って行った先は間違いなく民家だが気にしないことにした。

 人生、鈍感力とか必要ですもんね、先生。

 こうして鳩屋との遭遇二回目終わりましたよ。

 読んで下さり、ありがとうございました。

 こうして書き直すと共に、あとがきまで手を付けているわけで。他の方々はこんなに小説とかあとがきとか書き直してないよな、と考えつつ。

 楽しいです。頑張って続けよう。

 では、また。

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