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金庫

作者: 白黒 青紫

「眠いな~」

「そうだな」

「眠ったらダメかな?」

「ダメだろ」

「だよな~」


 某銀行の某金庫前。2人の守衛が他愛の無い会話をしていた。


「しかし何が保管されてんだ、この金庫」

「そりゃ銀行だし、金とか金の延べ棒とか、盗まれちゃ困るもんじゃないか」

「ま、そうだよな」

「それより交代の時間まであと3時間だぞ。そろそろコンピューターのチェック時間だ」

「ああ、そうだな」

「ええっと。今回の入力コードはなんだっけか」

「コード忘れたのかよ」

「悪い悪い。毎回このコード入力ほんとめんどくさいからな」

「でもやらなくちゃいけないぞ。頭取が絶対忘れるな、と念を押してたからな」

「解ってるさ。確か・・・H・・T・・ん~・・RAET・・・OH・・・だったかな」

「間違えたらめんどくさいことになるから、ちょっと確認してこいよ」

「ああ、大丈夫だろう。たぶん合ってる」


 守衛の1人がコンピューターのキーボードにコードを入力していく。入力してエンターキーを押した。


 ビーッビーッビーッ


 金庫の扉から警告アラームがけたたましく鳴る。


「あほ。間違えてるじゃねーか」

「あ~ホントすまん」

「下手したら始末書ものだってわかってるだろ!だから確認して来いって言ったのによ」

「んまぁしょうがねえ。ちょいとコード確認してくるわ」

「すぐ戻って来いよ。早よせんと扉の電源落ちるからな」

「ダッシュで行って来るわ」

「んとによ~頼むぜ」


 守衛の1人が金庫前の長い廊下を走り出す。無機質の壁に囲まれた廊下に残された守衛は諦めた顔で銀行の扉を見やった。


「しかし2時間ごとに入力ってのもめんどくさくてしょうがねーな・・誰が考えたんだこんなシステム」


 ブィーン・・・プッ


「あ~電源落ちやがった。あの野郎、遅いっての。今日は始末書だろうなぁ」


 残された守衛がブツブツ呟いている。他にすることがないから、彼は相棒が戻ってくるのを待つだけだ。


「しかし、中身はなんなんだろうね。温度管理もしてるみたいだし、余程重要な物なんだろうけど」

 

 温度センサーやいろいろな計器が扉にはくっついているが守衛には何が何だか解らない。時折やってくる頭取が計器類を見ながらコンピューターをいじっているのを見ているが、中身については何も言わない。扉が開けられたところも見たことはない。


 そんなことを思いながら守衛はコンピューターの画面を見る。いろいろな文字が現れては消えるのをボーッと見ていた。

「EKA・・・U・・・あ~わかんね」

「ENOZ・・・早過ぎて読めないなぁ」


 守衛はコンピューターに現れては消える文字を何の気なく眺めながら、相棒の帰還を待っていた。


 そのうち、足早に駆けてくる足音を2人分聞いて事がめんどくさくなったことを直感した。


「馬鹿者。電源を落としたのか」

「すいません。入力コードを間違えてしまって」

「うるさい。2人とも始末書を準備しろ。首にしないだけマシだと思え」

「解りました」


 頭取は2人を怒鳴りつけながらコンピューターのキーボードを慎重に操作しはじめた。頭取が焦っている様子を見ながら、守衛の2人は血相を変えている。

「あの~」

「なんだ。うるさい。慎重にしなくちゃいけないから話しかけないでくれ」

「中身は何なんですか?」

「いいから黙っていろ。首にされたいのか?」

「あ、いえいえ!すいません」

「解ったなら黙っていろ」


 頭取はコンピューターを必死に操作しているようだった。頭取の顔には焦りの表情がありありと浮かんでいる。何かとんでもないことが起きたのかと2人の守衛は重苦しい空気の中青白くなっていた。


「室温が高くなってるな・・少し揺れも起きてるか」


頭取が独り言のように呟く。


「大丈夫でしょうか?」

守衛の1人が恐る恐る尋ねてみる。

「わからん。少し調整しなくてはダメかもしれん」

頭取は今まで見せたことのないような少し諦めたような表情で答える。

「なんとかなりますでしょうか?」

「なんとかしなくてはならぬ。2人とも少し戻っていてくれ」

「待機場所にですか?」

「そうだ。これから扉を開けて調整する。この金庫で保管しているものはお前たちに見せてはならない機密もある。首になりたくなければ部屋に戻って始末書の準備でもしてくることだ」

「解りました・・本当にすみませんでした」


 2人はお辞儀をして頭取の指示に従うしかなかった。無機質な廊下を回れ右してとぼとぼと歩いていった。

「ふう・・・久しぶりに開けるか・・・NEPO」

頭取がコンピューターに入力すると、重々しい扉が静かに開いた。








 そこには青く輝く美しい丸い球体が浮いていた。


「本当に久しぶりに見るな。以前は空調が壊れて冷えすぎたときだったか」

頭取は呟きながら、青い球体を目を細めながら見つめる。





「その前は彗星がぶつかってえらい目にあったな。恐竜どもが全滅じゃったしの」

「少し前には人間どもが核とやらで滅びるところだったしのう」

「今回は室温が上がり過ぎているのか。調整ができるかどうかわからんが何とかしないとの」




 The Planet Earth その結果は神のみぞ知る

 

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