詩 彼が手紙を書くと言い出した
「手紙、書いてもいい?」
「え」
私は彼の言葉にびっくりし、思わず口を押さえる。
「いけないか?」
私の様子を伺う彼。
まるで肉食獣が小型化したみたいな、愛らしさのある仕草。
私は勢いよく首を横に振る。
「全然!! 大丈夫!!」
「そうか。良かった」
彼は安堵したのか、息を吐き出す。
何で急に手紙?
まだドキドキが止まらないが、彼が手紙を書いてくれるなら、欲しいに決まっている。
「どうして急に?」
思いきって顔を上げ、彼と目を合わせる。
彼は長身なので、少しだけつま先立ちになる。
「前から思っていたんだけど、俺ってお前の前にいると、上手く喋られなくなるからさ。言葉を伝えるためにも、手紙を書いたほうがいいかなって」
「…ああ」
私は納得し、笑みを浮かべる。
「気にしなくてもいいのに。あなたはあなたなんだから」
「…そうか?」
「そうよ!! 私が好きになったんだから、自信を持って!!」
私は言った直後、顔を赤く染めていく。
夕日よりも真っ赤だと、自覚がある。
言い過ぎたみたいだ。
照れていると、彼がくすりと笑い、私の頬に指を当ててくる。
ピアニストみたいに、長くて綺麗な指。
何度も押してくるので、そのままにしておく。
「書いてよ、手紙。嬉しいから」
「おう」
彼は男らしく答えると、身体をゆっくり倒してくる。
そして耳に吹き込むように、小さく言う。
「好きだよ」
「!!」
反則だと思ったが、自然と彼の耳に顔を近づける。
「私も」
それだけ言うと、彼の肩に額を当てるのだった。




