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フローライト 1
オブシディアンと結婚して30年が過ぎた。彼のそばで生きることはできた。でもなんて心を蝕まれ続けた30年だったのだろうか。
わたしを苛むのはわたしの心弱さだ。なぜ自分の気持ちを彼にぶつけることから逃げてしまったのだろう。あの日、あのはじめの日に自分の気持ちを言えていれば、ちゃんとした夫婦として生きたいと、ちゃんと抱かれたいとなぜ言えなかったのか。それで彼が拒否したならそれはそれで受け入れるしかなかったし勿論辛かったかもしれない。でも今のこの後悔よりはきっとましだった。一言を言う勇気が持てなかったことを今も悔やんでいる。
その代償としてわたしたちは別々に暮らしている。同じ王宮で生活していても顔を合わせることは稀だ。でも彼との絆はつくれなくても子育ては幸せだった。子どもたちを介して彼と関わり会話することはもちろんあった。彼が他人行儀のまま私をいつまでも亡き兄の婚約者かのように扱うことに傷つき続けてきたが、彼は優しかったから、よしとしなければ。それに、ちゃんとした夫婦としてではなくとも彼とずっと関わって生きていくことはできたのだから。




