フローライト 3
内輪で義母の誕生日祝いが開かれることになり、わたしは離れに向かう小道を歩いていた。その日もまた雨が静かに降っていた。と、オブシディアンが向こうからやってくる。そしてあの時と同じように遠目でわたしに気づき、傘もないのに小道から外れ屋根のない道を歩いてくる。わたしは急いで彼に近づいて言った。
「王が濡れてはいけません、この道をお通りください」
彼はおかしそうに言う。
「この程度の雨がどうということがありますか。それよりあなたに濡れてほしくない」
わたしの口を言葉がついて出てきてしまう。隠してきた言葉が溢れてくる。
「あなたのそういうところがずっと好きでした。ほんの幼い少女の頃から」
王は、オブシディアンは、驚いた表情でそして急によろける。わたしはそんな彼を抱きとめようとし、でもバランスを崩し大の大人が二人、雨の小道で尻もちをつく。そして見つめ合う。
「何故そんな。何故そんなことを言うのですか。何故本当にそう思っていたのならもっと早く教えてくれなかった」
何故今だったのだろう。それはこの小道がわたしにとって思い出の一つだったから。
「あの時、結婚の話が出た時の流れではとても言えませんでした。それでも、ずっと好きだった人が望んでくれるままに結婚をし、そして少しでも一緒にいることができるならばそれでいいと思っていましたから」
王はそのまま頭を抱え、そして涙を流す。
「そんなことは想像もできなかった。あなたは兄を慕っていたと思っていたから。でもあなたは自分にとってずっと憧れの人でした」
わたしも思ってもみなかった言葉を聞き幸福の絶頂に包まれる。わたしはもう怖いものもなく何もかも言ってしまおうと思う。
「わたしはもうこんな歳ですが、それでもわたしをまだ受け入れてくださいますか」
王は頷きながらわたしを強く抱きしめた。いい年をしたわたしたちは、柔らかな雨の中、泥にまみれて抱き合っていた。




