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第17話 vs円卓の騎士バルバロス 1

 同時にバルバロスも地面を蹴り、その身に合わぬ速さで風を切り裂き、猛然と距離を詰めてきていた。初期位置の距離は約15メートル。この程度の距離ならば互いが一瞬で眼前に迫った。間合いに入った瞬間、ほぼ同時に剣が振るわれた。

 刹那、剣が交錯したことで鼓膜が破れるほどの金属音と大地を揺るがすような衝撃波が波紋のように広まった。純粋なパワーには差があるが歯を食いしばり、影で支えてなんとか力比べで五分に持ち込む。でも流石『影纏い』。生身なら今ので体はただの肉塊になっていたことであろう。でも骨も筋肉も軋みそうだし、かなりきつい。能力のおかげで鍔迫り合いは拮抗。バルバロスの大剣からは火花が散っていて、時雨の漆黒の刀身に反射している。

 このまま鍔迫り合いをし続けて同じ距離にいても良くない。すぐさま剣を寝かせ、のど元へと刃を滑り込ませる。だがそれは予知されていたようで、瞬時にバックステップを踏んで躱された。俺もバックステップを踏み、一旦距離を取る。


「ほぉ…いい太刀筋だ。見立て通りだな。そこらの雑兵とは違う」

「そっちもね」

 心底感心してくれたようで口角をあげる。


「では…これはどうだ。【ガイア・マテリアル】」

 その魔法を唱えると共に手をかざすとバルバロスの周りの地面にオレンジ色の光を放つ魔法陣が描かれた。そして周囲の地面から5メートルを超える大岩が20から30個ほどせり上がり、空中に浮遊。一瞬停止したかと思えば、猛烈な速さで次々と俺に向かってきた。

 ならば俺も。


「【影ノ羽衣(かげのはごろも)雫ノ大盾(しずくのおおたて)】」


 手をかざすと高さ2メートル、厚さ10センチ。影で作り出された五角形の西洋風の盾が左手に出現させた。一見するとただの漆黒の盾だが影を何層にも重ねて創造されたその耐久力は強固なもので銃弾程度では傷一つ付かない…はず。試したことがないからわからないけど体感ではそう思っている。あと影纏いの練度に比例して強度は高まるから、相当な防御力を誇るはず。

 この迫って来ている岩も耐えられるだろうけど、同じ場所にとどまっていては圧迫されたり岩に挟まれたりして動くのに支障が出ることは想像に容易い。真正面から受けることは避けて、回避と盾での受け流しを狙うために足場の岩が崩れてしまうほどに力を入れて地面を蹴った。


 その直後、背後から地面に岩が衝突する轟音と地響き渡る。さっきまで俺が立っていた場所を一瞥すれば大岩が連なり、小山の様になっていた。動いてよかった。

 向かってきていた残りの大岩を盾越しに確認すると空中で俺の方へと方向転換してくる。追尾能力があるらしい。便利だけど、敵に回ると厄介な能力だ。

 走りながら横にステップを踏んで一つの大岩を回避。土煙が舞い、礫が鎧や兜を掠め、耳障りな衝突音が耳に張り付く。視界が一瞬悪くなる更に地面を蹴りその場から離脱。しかしその先の地面には大きな影。空中には大岩が迫っていた。偏差射撃のように回避先を狙ったようだ。うまいね。

 体勢を立て直し、盾を掲げる左腕に力を入れ右手を添える。膝を曲げて重心を低くして衝撃に備える。盾で大岩を受け止めるなんて生身では不可能なのだが、影纏いを発動している今ならできる。

 構えた瞬間、盾に大岩が触れた。全身を貫くような衝撃。骨や筋肉が軋みそう。血の流れが一瞬止まり、急激に動き出す。

 これでこの魔法の威力が分かった。これなら対処できる!

 腕と連動して体を捻り、岩を斜め後ろに受け流す。そしてその反動と岩が地面に当たる衝撃を利用して一気に前に突進。背後から岩が地面に落ちた衝撃で発生した爆風が、背中を押して追い風になる。


 盾をしまい、魔法を放ったバルバロス目掛けて一気に距離を詰める。

 岩を躱した先にはまだ何個もの岩が降り注いできていた。その先には大剣を構えてこちらに悠然と飛び込んでくるバルバロスが見える。俺の動きを見てこの岩は対処されると感じて二の矢を放ったわけだ。流石。

 感心しつつもまずは、眼前に迫る岩の流星群に対処する。もう影は這わせてある。

「【影ノ水面(かげのみなも)槍ノ草原(やりのそうげん)】」

 影で作り出された、人と同じくらいの太さを誇る槍が突き出し、迫って来ていた全ての大岩を粉砕。砕かれた小さな岩が降り注ぐが纏った影によりダメージもない。そのまま剣を構えてバルバロスへと突っ込む。

 予期されていたようで刃は届かず交錯。けたたましい音と骨の芯まで響く衝撃が襲ってくる。幾度も連撃がぶつかり合い、またも鍔迫り合いに。視線が重なる。バルバロスは心底楽しそうに口角があげていて、鋭利な白い歯が不気味に輝いている。

 そんな余裕な表情のバルバロスに影ノ水面で出現させた槍を突き立てる。しかし当たる直前、バックステップを踏み、鍔迫り合いをしていた大剣を寝かせて横に振り払った。

 ガシャッ!!

 脳を揺らすほどに不快な金属音が耳をつんざく。岩も砕いた影の槍は、大剣の薙ぎ払いによって弾き飛ばされ砕けた。細かい粒子となって影が地面へと舞い戻る。貫通するどころか傷すらもつけることができなかった。切れ味もさることながら大剣の耐久性も高い。厄介だ。

 生暖かい風が土煙を起こし辺りに揺らめく。まるで西部劇の決闘みたいだ…なんて少し悠長に感じてしまう。


「影使いか。…これもまた、例外か」

「正確な名前は【影纏い】だ。まぁこの世界だと使い手は俺しかいないんじゃないかな」

「【影纏い】…あの大岩をも砕く攻撃性、我の魔法を凌げる耐久性…興味深い。しかもお前の武器にはマナが宿っていない。本来なら大した威力も出ないはずがこれほどまでの破壊力。滾ってきたぞ!人類では久々に骨のある敵…騎士団長クラスはありそうだな」


 マナの属性とやらを攻撃に乗せることができれば俺の攻撃力は格段に上がるようだ。いつか使いたいなぁ…魔法。憧れだもん。

「敵だろうとは誉め言葉は嬉しいけどその騎士団長とやらには会ったことがないから実力はわからないし、実感がわかないよ」

「我もまだ会ったことがないが、会っていれば既に死んでいるだろうな。試してやろう」

 素早く空に手をかざし呟く。

「【バーテスク・オブ・メテオストライク】」

 詠唱と同時に、バルバロスの周りに先ほどよりも大きな魔法陣が描かれる。


 メテオストライクの意味ってたしか…『隕石』…?!意味を思い出した瞬間、心臓が握りつぶされているかのような圧迫感が胸を襲う。冷や汗が頬を伝う。待て待て待て!!落ち着け俺、まだ慌てるような時間じゃない。言葉通りの意味とは限らないじゃないか。それに今からバルバロスを斬れば魔法の効果は切れるんじゃないか?いや…“わからない”。俺の魔法に対する知識は浅い。時間は限られていた時間で魔法に関する事はほとんど調べられていない。辛うじて成り立ちや基本的な発動方法など、始まりの部分のみ。一度発動した魔法はどうすれば止まるのか、むしろ止められるのかすらもわからない。

 そんなことが頭の中を一瞬で駆け巡る。時間にして一秒足らず。


 結論は─『そんなことを考えても仕方がない』だった。どういう魔法かわからない以上、防御態勢は取っておくべき。そして俺に向かって放ったという事は、落下地点は“俺”。直撃だけは避けたい。足に全身全霊で持てるだけの全力で力を入れて地面を蹴り、その場から離脱しつつ雫ノ大盾を作り出しながら空を見上げる。本当に隕石ならば空から降ってくるはずだから。

 目を向けると同時、上空から地面を這いつくばってくるような重低音が鳴り響く。空から漏れ出ていた日光や雲の色が深紅に変わっていく。先ほどまでに吹き荒れていた風は不気味なほどの静かに止まり、辺りには重低音だけが鳴り響く。遥か上空、雲の切れ間から眩い光が差し込む。徐々に光は強まり、強烈な光を放つ塊が姿を現した。


「わぁ…隕石だぁ…ははっ」

 どうやらメテオストライク─隕石なのは間違いないようだ。俺は魔法を甘く見ていた。こんな規格外の事もできるなんて…ただただ乾いた笑いが漏れた。


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