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第14話 推しと事前情報からの決戦開始

 今ある情報を騎士の人に教えてもらいながら結界へと移動。残念な事に移動の間に第2結界も突破されてしまい、残るはアルビオンに来た時に通ったあの魔法陣のみ。そこが最終防衛ラインとなった。戦闘開始地点は来る時に通った広々として草原。周りに町や村、木や岩など隠れられそうな遮蔽物もない。真っ向からの衝突となりそう。


「そういえばディアブロってなんか特徴あるの?ガーゴイルしか見たことがないから判断基準がないんだよね。ディアブロってみんな、あんな感じの化け物みたいな感じの奴?」

「多種多様。名前が付いている方が珍しい。ほとんどに共通している特徴は、黒鋼の鎧を纏っているという事ですね。そして1つ…絶対に教えておかなくてはいけない情報が」


 少し深刻そうな声色で指揮を預かっている、褐色肌でシルバーの髪も女性隊長が口を開いた。嫌な情報なようで険しい表情で言いづらそうにしていた。


「何でしょう?」

「敵の1体には【スペリオル】…すなわち『円卓の騎士』の姿が確認できたと報告が上がっています。今はまだ合流できておらず後方にいるようですが、戦線に加わるのも時間の問題。円卓の騎士から攻撃されれば、おそらく今の結界は有って無いようなもの。酷なお願いかもしれませんが、円卓の騎士が合流する前に敵を退けて魔法陣を回復させてください」

「なるほど…スペリオル、円卓の騎士。本当に…すみません、スペリオルってなに?あと円卓の騎士の説明もなにとぞ…それと、魔法陣ってどうやって回復させるの?」


 かなりシリアスな場面だったが初めて聞くことだったので、流石に知らないとまずそうで聞いてしまった。何も知らないんだ…許してほしい。

 周囲から呆れたようなため息が聞こえ、瞳からは希望の光が薄まり不安と『こいつら大丈夫か?』みたいな疑いの色が強まった気がした。さっきまでの高らかなる宣言も格好がつかない形になって少し恥ずかしい。

 隣にいるユイカちゃんも少し申し訳なさそうに咳ばらいをしてから『いろいろあって私たちは知識不足なので』と言ってくれた。なんかいろいろと申し訳ない。


 【スペリオル】─種族で類まれなる戦闘能力を誇る者に天より与えられる称号。人類ならパラディンや騎士団長クラス。ディアブロならば円卓の騎士クラス(推定)。この称号を保有する者同士の決闘は【リミテッド・トリニティ】で行われる。

 【円卓の騎士】─ディアブロの幹部の総称。


 呆れて光が薄れた瞳で軽く説明してくれた。そして俺たちもパラディンであるため、【スペリオル】と呼ばれるカテゴリーに属するらしい。なんかゲームみたいに称号がいっぱいでテンションが上がるね。

 【リミテッド・トリニティ】なる単語はこの際、気にしない事にしよう。


「人類なら、パラディンでなくとも天性の実力を誇れば守護者アルカナが授けてくれる称号だと言われています。ランスロッド騎士団長がそのうちの一人で、あの人はパラディンではありませんがスペリオルの称号を持っています。どの程度の実力で授けてくれるのかは解明されておらず、まだまだ未知数。人類ですらもそうなのでディアブロの中ともなると想像でしかありませんが、円卓の騎士は全員スペリオルなのでそれが条件かと。どちらにせよ、実力は天から与えられた折り紙付き。お気をつけて…」

「オッケーです!いきなり敵の幹部との激突だと理解できた」

「それと魔法陣の回復方法は私達は知らぬこと故、アルベール王にお伺いください」

「了解!じゃあ…行こっか!」

「え…ちょっ!?作戦は!?」

 隊長や周囲の騎士から困惑の声が漏れる。

「作戦ですか?ちゃんとありますよ」

 『何を当然なことを?』とばかりに不思議そうな表情を浮かべている。不安そうな目を向けているが、俺はユイカちゃんの作戦ならば大丈夫であろうと全面的に信頼しているから不安はない。初めて聞くけど“どんとこい”、そんな気分だ。

 全員を見渡してから力強く、高らかに答えた。


「真正面から敵を倒す!以上です」

「おぉ…流石ユイカちゃ…さん!」


 周りの空気を揺らすほどに威風堂々と、作戦とは呼べないような作戦を胸高らかに宣言するユイカちゃん。自信はたっぷりらしく、腰に手を当て、胸を張り、そしていつもの得意顔を浮かべている。溢れる自信と太陽の光によって神々しく輝いて見える。可愛い!

 あまりにも堂々と勇ましい様子で強行突破を図る姿に胸がキュンとして、人前にもかかわらず“ちゃん”付けしかけた。セーフ。たまにこうやって真面目な顔でパワープレイに走るから、そのギャップによる可愛さで毎回やられるんだよね。

 チラッと周りを見ると明らか不安そうで、そして少し呆れて雰囲気で天を仰いでいた。

 まぁ…この反応も仕方がない。今はまだ信頼も信用もないだろうから。でもそんなのは関係ない。『ユイカちゃんと一緒に戦える』─ただそれだけで自信が湧き出てくるのだから。負ける気なんか一切にしない。むしろ勝利以外見えない。


「一緒に頑張ろうね!」

「夢叶君と一緒に戦えることを心待ちにしていました。楽しみです」


 和気あいあいとしている俺たちと違い、周りの人は不安そうにこちらを見つめている。まるで壁があるかのように空気が違う。煌々と輝く3つの太陽に照らされて、暖かな空気に包まれている俺達と、まるで冬の大気を浴びているように陰鬱な雰囲気。まさに陰と陽。


 結界付近に到着。近づくにつれて轟音と微かな衝撃と共に、薄紫色をした雷のような閃光が縦横無尽に駆け巡っているのが見える。結界の外は、敵の攻撃による土煙と閃光によってほとんど何も見えない。

「結界に魔法陣の防衛反応です。あの色になっているという事は、相当なダメージが蓄積しているという事です」

 結界魔法と閃光に近くなったために、まるで雷雨の真ん中にいるような眩しさが襲ってきていた。魔法陣の中だからか衝撃波も轟音もなく、ただただ激しく脈を打つような閃光がひた走っている光景が目に入る。戦場が目の前に迫り、緊張感が高まった。

「どうですか?怖気づきましたか?」

「隊長ともあろう人でも、こんな場面で冗談を言うのですね」

 微笑みながら返すユイカちゃん。その目は爛々と闘志の炎を宿し、ただ前を見据えている。俺も小さく頷いて返す。その様子の周囲は少しだけホッとしたようで口元を緩ませた。自信が伝わったのだろう。

「我々は避難を命じられていますので、ここまで。いても足を引っ張るだけでしょう。どうかアルビオンを…ユグドをお救いください。アルカナの加護がありますように…ご武運を」

 そう言って隊長が頭を下げると他の騎士達も続けて深く頭を下げた。返すように小さく頷いてから前を向いて、結界へと近づく。


「緊張していますか?」

「ユイカちゃんの隣を歩いてることには緊張してるよ!」

「夢叶君は相変わらずですね」

「エヘヘ、ユイカちゃんは?」

「戦いの場はいつも適度な緊張感を持つようにはしていますけど、緊張はしていませんね。平常心と自分の力を信じるのみです」

「流石!そういえばこの弾幕どうする?」

「普通なら弾幕がない場所から出て、強襲を仕掛けるのが正攻法ですけど…実力を見せてあげましょう」


 そう言ってOREDRを発動。可愛い服が光の粒子に包み込まれ、一瞬にして純白の戦闘着へ変わった。右手には前と同じように金色の大剣。そして左手にはユイカちゃんがすっぽりと入るほどの群青色の円盾。

 か、カッコいい!!待ちわびていた変身シーンを目の前で見れるなんて嬉しすぎる!!

 浮かれそうになりながら…いやもう結構浮かれているけどこれ以上は悪化しないようにしながら気持ちを押さえつつ影纏いを発動。体に影の鎧を纏い、右手にいつもの大剣、そしてユイカちゃんに習って左手に盾。デザインも少し真似てみた。


「では…行きましょうか。私は右手側で!」

「オッケー!左を一掃するよ!」


 その言葉と共に同時に地面を蹴った。風を切り、弾幕が降り注ぐ戦場へと飛び出した。

 魔法陣を飛び出した瞬間、耳をつんざく轟音が聞こえたと同時に構えた盾に衝撃が止めどなく襲ってくる。衝撃で左手が少し震える。敵の攻撃をこの盾で全て受け止めているのだから当然だろう。

 でも─。

「この程度じゃ止まらない…!」

 視界いっぱいに土煙と閃光しか見えないが、影を這わせて敵の位置を確認。盾を構えたまま、敵へと突っ込む。

「なんだこい─」

 弾幕を押し返し、土煙と閃光から飛び出すと瞬時に敵の懐に入り、同時に剣を斬り上げた。

 斬撃が捉えたのは3メートルを超え、黒鋼の刺々しい鎧と悪魔を思わせるような巻き角が生えた鮮血のような真っ赤な兜を纏った兵士。鎧も兜もプレートアーマー風になっているので西洋的な装い。これがさっき言っていた鎧か。わかりやすい特徴だ。

 余裕綽々に構えていたところの土煙の中から突然現れた俺に気が付いて驚きの声をあげたが気づくのが遅く、そのセリフの途中で鎧ごと切り裂かれて上半身と下半身が斜めにお別れをした。

 斬った瞬間に確かな手ごたえと感じつつ、地面を蹴り次の敵へと駆ける。止まる気も確認する気もない。この感触だけで十分だ。


「敵襲っっ!!パラディンが現れたぞぉぉおお!!!!首をとれぇぇええ!!!!!」


 味方一人が一瞬にしてやられても指揮官らしき戦士が冷静に声を張り上げて、指示を出す。右の方からは怒号に紛れて悲鳴や独特な銃声が聞こえる。ユイカちゃんがOREDRで作り出したあの近未来的な銃の音だ。状況はよくわからないけど、怒号と悲鳴でユイカちゃんが敵を蹂躙しているのだけは分かる。流石ユイカちゃん!俺も負けていられない。

 踏み込むと同時に、ディアブロが火球を放ってきた。魔法によって生み出されたものだろう、と思いつつ盾で弾き飛ばし突進。中々の威力だけど、これで止まるほど軟じゃない。距離が詰められていると判断するや否や、すぐさま手に持っていた大斧を振りかざしてきた。切れ味を物語るように、日光が反射して刃先がキラリと不気味に光る。生身で食らえば一瞬で肉塊へと変貌してしまうだろう、なんて…ガーゴイルの時と同じ感想が浮かんだ。

 背中がひやりと寒くなるのを感じながら、大剣を横に振りながら駆け抜ける。後ろから聞こえる短い断末魔と、風に乗った鮮血を置き去りにして。


 単騎では分が悪いと判断してか、今度は取り囲むように一斉に襲い掛かってきた。合計8体。集団でかかれば多少の犠牲が出ても仕留められると思ってのことか。確かにこの大剣では切れても3体程度。盾でガードしても1、2撃は入る。目には多少の恐怖心が浮かんでいるものの、闘争心の方が遥かにそれを凌駕していて、まっすぐと俺を捉えていた。

 いいねぇ、そう来なくっちゃ。でも俺も、黙って食らうわけにはいかない。もう影は這わせている。


「【影ノ水面(かげのみなも)槍ノ草原(やりのそうげん)】」


 敵の近くまで這わせた影から、槍の形状をした鋭利で尖った影が兵士に突き刺さる。鎧をものともせず貫通した影には血がしたたり落ち、短い断末魔をあげた兵士は体を大きく痙攣した後に永遠に動きを止めた。

 石化し始めた肉塊となった者の間を通り抜け、次の敵へと刃を向ける。止まることなく縦横無尽に駆け巡り、飛んでくる魔法を叩き落し、敵を次々に切り裂く。

 ちらちらとユイカちゃんの方へと視線を向けてみる。華麗に敵を薙ぎ払い、悠然と突き進む姿が見えた。闘志の炎が宿った綺麗なライトグリーンの瞳が爛々と輝きを放ちつつ、ただ目の前の敵を捉え、敵をちぎっては投げ、一帯を蹂躙していく。鬼神の如くカッコいい!活躍に見惚れしまいそうになるのを我慢しながら、目の前の敵を薙ぎ払う。


 大勢のディアブロに覆われていた草原もほんの数分後には、石化した屍が乱雑する大地へと変貌していた。石化した体も、流れていた鮮血も砂と化し、風に吹かれ徐々に崩れて土に還っている。先ほどまで指示を出していた指揮官らしき兵士も今は石化して地面に横たわり、ピクリとも動かない。凄惨な血塗られた大地にならなくてよかった。

 恐怖におののき撤退するディアブロもちらほらと見え、遠くの方で『撤退っ!!!』と叫ぶ声が聞こえる。逃亡を図っていない者もこの凄惨たる光景を目の当たりにして恐怖で距離を取り始めていて、接近戦を仕掛けてくる者はもういなくなった。遠距離から魔法を放ちつつ撤退に向けて動いている。

 ユイカちゃんの方も同じ状況で、死体が積み重なり、返り血も浴びていない綺麗な状態のまま草原に1人でぽつんと立っている。距離を取る数少ない敵に銃を連射して仕留める勇ましい姿が見えた。


 最早、戦いにすらなっていない。俺も逃がすつもりはないので、遠くなっていく敵を追い、邁進する。残念ながら俺には遠距離攻撃は備わっていないからね。



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