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8 魔法学校の卒業

「スタントンは卒業したら神殿で薬師の修行するんだよね。」

「そうだよ。本当は地竜の討伐で一番になれたら、高等魔法学校へ行けたんだけど、それも無しになった。皆が一番だなんてあり得ないよ。」

「高等魔法学校を卒業すればもっと上があるの?」

「それは、賢者の弟子になるって事か?俺は嫌だな。一生結婚出来ないぞ。賢者になるには、独身を通さなければならないから。」

そうなんだ。知らなかった。賢者とはそこまでしないとなれない物なのか。

何でも、今いる賢者は、生まれつきの魔石持ちらしい。キラはそれは嫌だなと思った。

「大地竜はどうやって倒したんだろう。」

「ベンゼルが教えてくれた。魔法騎士が穴に入って行って、倒したんだって。勇気あるよな。俺にはとてもじゃないが無理だ。」

「でも、浮遊魔法で降りて、結界を張りながら倒せば大丈夫じゃないか?」

「何言ってるんだ。浮遊魔法は飛竜隊の奥義だぞ。飛竜隊に入っていなければ教えて貰えない。結界だって凄く難しい魔法だ。何年も修行しないと会得出来ないんだぞ。」

結界の魔道具があれば大丈夫な気がするが、そこは黙って、

「そうだったのか。じゃあ高等魔法学校は何を教えているんだ?」

「大体が錬金術だな。後は戦闘魔法の開発とかの研究所へ行きたい奴が入る。」

「君は神殿へ行くと決まっていたのに何故高等魔法学校へ行きたかったんだ?」

「いや、何となく。まだ神殿に引きこもりたくなかっただけだ。」

商会では錬金術を覚えさせたいだろう。魔法鞄や、魔道具は商会の目玉商品だ。何時も高い権利料を払って貴族から譲って貰って居た。キラはきっと高等魔法学校へ行かせて貰えるだろう。

商会は自前の魔法使いを欲しがっていたもの。

卒業も二ヶ月後に迫った冬のある日、商会から連絡があったと養父に言われた。

「キラ君、商会長の所へ行ってくれないか?」

「はい。」

何か問題があったのだろうか。商会長は、キラの高等魔法学校への入学許可がなかなか下りないと困っていた。

商会長の部屋に通されたキラは、そこに、この間助けてあげた老人がいるのに気がついた。

老人は道ばたに倒れていた。学校から帰って家に入る時にドアの前で座り込んでいたのだ。具合が悪いのかと聞くと、足をくじいたと言う。

覚えたばかりの治癒魔法で直してあげたのだ。

光魔法のレベルが、この間の地竜の討伐のお陰でかなり上がったお陰だった。

スタントンも使えるようになっていた。彼は次代の神殿長候補になったと喜んでいた。

老人はキラの名前と年齢を聞いて、キラの魔石をじっと見てから徐に、

「後で、お礼に伺う。」

と言ってスタスタと歩いて帰って行き、それきりなんの音沙汰もなかった。

「キラです。この間の足は治りましたか?」

「ああ、おかげさまでな。君にお礼をしようと思ってこちらに出向いた。」

商会長を見ると、ブルブル震えて顔色が悪い。病気かな?キラが心配して尋ねようとすると、老人が、

「君を私の弟子にしようと考えておる。それの確認に来たのだ。ここの商会長が、私に知らせなかったことは、大目に見てやろうと思ってな。」

何のことかよく分らない。老人の弟子とはどう言うことなのか。

「商会長、どうして僕がこの方の弟子になるんですか?確か高等魔法学校へ行って、商会の魔法使いになって、魔法鞄や魔道具を作る仕事をするのが、僕の将来だと思っていました。」

「キラ君、そ、それは、そうなんだが・・」

「私から説明をしよう。君のような貴重な存在は、本来国へ報告しなければならないのだよ。それをこの商会で養子縁組みをしてしまい、どうしようもなくなった。暫く様子を見てみることにしたんだ。だが、君は素晴らしい才能を見せてくれた。このままでは君の将来が商人になって仕舞う。国は国の為に働いてくれるように君に打診したはずだ。話が通じていないようなので私に連絡が来たと言うわけだが。私が確認したところ、君は賢者の素質がある事が判明した。国などではなく、私の個人に使えることを許そう。」

賢者だって!絶対嫌だ。どうして勝手に弟子にすることにしたんだ。許すだなんて偉そうな物言いも気に食わない。

「お断りします。僕はこの商会のお陰で生きていられたような物です。大きな恩があります。」

「キラ君!そんなに恩を感じてくれていたのか。ありがとう。しかし・・」

「恩などと、馬鹿馬鹿しい。君は利用されていただけだ。これからはもっと先の勉強をするべきだ。つまらない魔道具を作らされて一生を送るつもりか?」

「つまらなくありません。魔道具には興味があります。」

「それなら私の処で幾らでも作りたまえ。素材は沢山用意しよう。恩などとつまらないことは考えなくてもいい。自由に作りたい物を作れば良い。そしてこの商会にくれてやれば言い。」

その言葉を聞いた商会長はぱーっと明るい顔になった。そして期待を込めた目をキラに向けた。

「キラ君。君は賢者の弟子になるべきだ。是非魔道具を作って商会に卸してくれ。幾らでも買い取る。」

何という変わり身の早さだ。こうなればキラには、どうしようもない。誰も助けてくれる人などいなくなってしまった。

「分ったかね。こう言う事だよ。君の養子縁組は解消だ。私の跡取りとして実子と同じ権利の手続をしよう。」

もう決まってしまった。キラは一生独身のままこの老人の弟子として生きていかねばならなくなった。



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