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7 多すぎた獲物

拠点に一番早く帰ってきたキラ達。

他のグループはまだ山にいるみたいだ。教師が、控えていた護衛の兵士に事の次第を話している。兵士の一人が馬に乗って走り去った。

「これから兵士が来て、一斉に討伐することになった。倒した獲物は其の侭にしておいて構わないから、明日からはどんどん倒して行く。多分予備の魔法鞄を持ってきてくれるから、君たちは鞄に回収しなくても兵士がやってくれるはずだ。」

「先生、討伐数の確認はどうなりますか?」

討伐数が多ければ、表彰されることになっていた。それがうやむやになるのがいやなのだろう。スタントンの発言にまた困った顔をする教師だった。

「スタン、緊急事態だ。諦めろ、今年は表彰は無しになるかもな。」

ベンゼルの言ったことに愕然とするスタントンだった。

「最大の魔法鞄を持ってきている人が一番になるんじゃない?」

ルシアーヌが言った言葉に、みんなデストロルの方を向いた。デストロルは困った顔をして、

「私は持っていない。何時も地竜を倒せなかったし。」

ガックリするみんな。頼みの公爵の子供も持っていない魔法鞄。最大の魔法鞄とは、どれくらいの容量があるのだろう。

「誰も持っているはずがないわ。皆一緒の討伐数になって良かったじゃない。」

フェリーヌが言うと、スタントンもそうだな、と納得したようだ。

他にすることもなくなったので夕食の支度をし始めるとちらほらと他のグループも帰って来た。スタントンがすかさず、

「お前達はどれくらい地竜を狩った?」

皆が言うには取れなかった、と言う事だった。嬉しそうな顔をしてスタントンはその話をキラに聞かせている。

「きっと小石を投げなかったんだな。キラ!でかしたぞ。君のお陰で俺は一番になれるかも知れない。」

まだ、諦めていなかったんだ。一番になれば何か良い事でもあるのだろうか。

次の日、報告に行った兵士が帰ってきた。随分急いで行ってきてくれたようだ。兵士は魔法鞄を大量に抱えていた。

キラ達には2つずつ渡された。兵士達も同行するという。

「良し!これで一番間違い無しだ。」

スタントンの言葉を聞いて皆もやる気に満ちてきた。

「分らないぞ。ここに居る誰もが一番になれる可能性がある!」

それを聞いて、デストロルも顔を紅潮させて、いつになく興奮していた。

「私でも一番になれるかも知れない。」

急いで岩山へ出発した。昨日早めにかえってきたので、疲れてもいなかったキラ達は走るような勢いで昨日のポイントに着いた。

昨日で地竜がどこにいるか目が慣れていたキラ達は、直ぐに魔法を放ち、討伐してゆく。

兵士達は、地竜を拾うのに忙しい。偶に生きている地竜にとどめを刺す程度だ。

しかし、倒しても倒しても、地竜は次々に何処からか現れてくる。

キラはじっと観察していた。岩の影からのそのそと這い上がっているようだ。

そこへ近づいていって見ると。大きな穴が開いていてそこから這い上がってきているようだ。

「先生、ここから一杯上がってきています。」

「なに!」

教師と兵士もそれを見て真っ青になった。

「スタンピートじゃないか!」

「若しかして地中の大地竜が出てこようとしているのかも知れない。こいつらはそれに押されて出てきたんだ。」

兵士が慌てて報告に行った。

大地竜は滅多に地上へは出てこないが、子供が生れて子供が育つと巣から別れて出てくることがあるそうだ。子供は大体二頭だという。

「今、魔法兵士達を呼びに行った。間に合えば良いが。兎に角倒せるだけ倒そう。回収は諦めるぞ。」

兵士達も一緒になって倒して行くが次々出てくるので、逃げられてしまっている。

他のグループもこのポイントに呼ばれたみたいだ。皆で倒して時間を稼いでいる。周りは地竜の死骸が所狭しと横たわっている。

これだけ狩ってしまえば、この後の生態系が崩れてしまうのではないか?キラは漠然とそんなことを考えていた。

生態系とは、この世界でも研究されているのだろうか。

今まではゴブリンや、他の魔獣は地竜達の餌になって増えすぎないようにバランスが取れていたはずだ。それがいま崩れてしまえば、今度は繁殖力の高い魔物が増えすぎるのではないか。

しかし、今倒さなければ、興奮状態の地竜が里まで下りて行って仕舞う。にっちもさっちも行かない状況だ。

一番良いのは、大地竜を討伐することなのだが。まだ出てこない。

何時間経ったのか分らなくなってきた。

「来たぞ!魔法騎士が来てくれたぞ。」

振り仰ぐと、飛竜が飛んでいた。飛竜から何かか落ちてくる。人だ!

「遅れて済まない、後は任せて君たちは避難してくれ。」

飛竜は空に其の侭滞空していた。この人はあそこから降りてきたのか?

キラはこのまま見ていたかったが、教師達に連れ出されてしまった。

キャンプの拠点に戻って、クラスごとに集まっている。

「ベンゼル。さっきの魔法騎士は、空から降りてきたように見えたけどどうなっているの?」

キラが聞くと、ベンゼルは、得意そうに話してくれた。

「飛竜隊の魔法騎士は風魔法の権威だ。浮遊魔法が使える。私の目標なんだ。」

浮遊魔法というのがあるんだ。頭の中の教本をもう一度探ってみるが、見付からない。彼等の特有の魔法なのだろうか。それとも、高等魔法学校で習う物なのだろうか。

この学校を卒業すれば皆バラバラになる。高等魔法学校へ行く者もいれば、家業を継ぐ物もいる。貴族の女子は、結婚のために準備をしていくという。

ベンゼルは、騎士学校へ行ってしまう。キラはまだ自分がこの先どうなるのか分らなかった。商会ではキラに何を期待しているのだろう。

暫くすると、大地竜が討伐されたと知らせが届いた。

「今回の課外授業はこれで終わりにする。皆帰り支度をするように。」

予定を大幅に繰り上げて、キラ達は学校へ帰った。


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