4 魔法学校の最終学年
キラは一週間、魔力操作の自主練をした。
そして出来ているかどうかの試験が行われて無事試験に通った。
これで皆と同じ授業が受けられる。
この学年は後半年で卒業なので急ぎ足で皆に追いつかなければならないだろう。
彼等が今やっているのは自分の得意属性を見極めて、それを延ばすことらしい。
皆、得意不得意があり、偏りがあって不得意を伸ばすには難しいそうだ。
キラもやってみたが、特にこれというのはなかった。強いて言えば闇が魔力の通りが良いような感じがする。そう教師に伝えると、
「ほう、闇か。珍しい物が得意だね。やはり生まれつき魔法使いだと違う物なのかな。」
と言った。
これまで、クラスメートとの接点は全くない。そろそろ友達が欲しいなと思うキラだった。
得意属性に分かれて魔法の練習をするのだが、闇が得意なのはキラしかいない。
「失敗した。また1人になって仕舞った。」
皆がいるのは水属性や火属性が多いようだ。あっちが得意だと言っておけば今頃は皆と授業を受けられたのに、間が悪いキラだった。
ふと見ると、横にも1人で練習している生徒がいた。彼は光属性の練習をしている。
「君も一人だね。」
思い切って声を掛けてみた。
「ああ、俺は本当は土属性が得意なんだ。だけど、俺の実家は神殿だ。如何しても光を覚えたくてね。不得意を伸ばすことは難しいけど頑張っているんだ。」
と言ってニヤリと笑った。
何となく良い感じだ。友達になって貰えるかも知れない。
光はキラも使える。一緒にやろうと言う事になった。教本の光の項目が頭の中に流れていく。それをなぞって魔法を使っていく。
「オー、もう出来てるじゃないか。俺にも教えてくれないか。」
「良いよ。僕の言ったとおりに魔力を流してみて。」
ただ、教本に書いているとおりに誘導してゆく。すると彼の掌に薄らと光の魔法が浮かび上がった。
彼は大喜びをしてキラに感謝をしている。
『彼は、本当は光も得意だったんじゃあないのか?本の読み込みが足りないだけだったような気がする。』
コッソリ、キラは考えていた。
「俺はスタントン・マイヤーって言うんだ。よろしくな。」
「僕はキラ、えーと、キラ・ドルトン」
「知ってる。君は有名だ、生まれつきの魔法使いは今では一人だけだ。いや、君と二人か。」
そうなんだ、そんなに珍しいなら、村で誰も知らないのは当たり前のことだった。
王都に来て友達も出来そうだ。その内、父の知り合いにも挨拶に行かなければならないだろうが、もう少し街の中の様子を知ってからでないと行くことは出来ないだろう。
スタントンとは、それから毎日一緒に魔法の練習をする中になった。
「俺は本当は死んでたかも知れないんだってさ。」
「何故?」
「この目に埋めた魔石のせいだ。頭部に魔石を埋めるのは死ぬ確率が高いんだ。然もこの魔密度密度が高い。俺が耐えきることが出来なければ魔石を埋めた処から腐って行って仕舞う。普通は手に埋めているだろう?あれは失敗したら片手を切り落とす事が出来るようにしているんだ。」
恐ろしいことを聞いた。そこまでして、魔法使いになりたいなんて、よく理解できないキラだった。
この国は魔法使いの力で発展してきた。他国に魔法の道具や、魔法使いを派遣したりしている。
他国でも稀に魔石持ちが生れているみたいだが、殆どが気味悪がって生れて直ぐに殺されたり見世物小屋に売られたりするそうだ。
魔法を使うには教育と高度な技術が必要だ。他国にはそれが分らないために魔法使いは殆どいないそうだ。
キラも似たような扱いだった。国の中でも知っている人は殆どいない。父の言うとおりになっていたかも知れないのだ。運良くセレスティンと巡り会えたお陰で、今はこうしていられる。
「君の実家は神殿だっていってたね。神殿ではどんなことをしているの?」
「薬を作ったりしている。神殿で作った薬は人気があるんだ。効き目が良いんだってさ。俺には同じに感じるけどね。後は孤児院もある。」
そしてコッソリ教えてくれたのは、実はスタントンは孤児だと言うことだった。小さいときに魔石を埋められ成功したので養子に為てもらえたのだという。3人の孤児が試して生き残ったのはスタントンだけだったそうだ。
何となく、神殿のイメージが悪くなった。キラが考えていた神様とは違いすぎた。人体実験に子供を使っているような、嫌な感じだ。
何にしてもこの国は魔法使いが重宝されている。
キラも同じだ。魔石があったから、養子に為てもらえたのだから。