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2 前世の記憶

セレスティンはとんでもない出会いをした。この国でも滅多にいない生まれつきの魔法使いに出会えたのだ。

セレスティンの務めている商会は、魔道具と魔法用品を主に取り扱っている貴族とも縁の深い商会だ。貴族達は自分たちの魔法使いを抱えることがステータスとなっている。

魔法使いを養成する学校を造り、優秀な魔法使いを育てパトロンとなる。

生まれつきでなくても魔法使いになることはできる。魔石を植え付け魔法使いにするのだ。

魔石を植え付ける手術は大変危険で、五人に二人は成功しない。成功しなかった場合は死ぬ。その為貴族でも五番目以降の二歳までの子供に手術を受けさせる。

若しくは側室の子供や妾の子に手術を受けさせる傾向があった。

平民はなかなか魔法使いになりたくても手術を受けさせて貰えない。

かなりお金をつぎ込んでも、質の悪い魔石を同化させる手術を受けさせて貰えるだ程度なのだ。

 子飼いの魔法使いは、商会にとっては喉から手が出る程欲しいものだ。

それが生まれつきともなれば、どれほどの価値があるだろう。

セレスティンは、早速商会長にこの話を持っていった。

八歳と学校に入る年齢としては時期が二年ほど遅れてはいるが、それでも学校へ入学させることは可能だろう。

「なんと、幸運に恵まれたことか。全面的に商会がバックアップしよう。取り敢えず私が後見人になろう。こちらで手続をしておく。君はその子供に逃げられないように見張っていてくれ。当面は商会には来なくて良い。子供に張り付いていてくれ。」

そんなこととはつゆ知らず、キラは一人でセレスティンの下宿で眠って居た。

旅の疲れが出て、熱を出してしまったのだ。

キラは不思議な夢を見ていた。

ヘリコプターに乗って地上を見下ろしている。前で操縦桿を握っていたパイロットの叫び声。直後にヘリコプターはきりもみ状態になり、突然意識がなくなった。

叫び声を上げて、飛び起きたキラは、もう今までのキラではなくなっていた。

「僕は知らない世界に生まれ変わっていた。以前は三五歳まで生きていた日本人だ。ヘリコプターが墜落して死んで仕舞った。ここは、時代が昔に戻った様な世界だ。」

意識がダブって、キラとしての自分と、三五歳の自分が不思議に調和している。今まで知らないはずのことが頭にある。だがそれ以上は思い出せなかった。どんな仕事だったか、名前は何だったか、家族はいたのか。細かい事が思い出せない。

魔石のある額がギリギリと締め付けるように痛い。熱を持ってそこが脈打っている。キラの額には手ぬぐいで覆いをして誰にも知られないようにしていた。

「キラ君、具合はどうかね。」

「頭が凄く痛いです。」

熱を持って赤くほてった顔のキラを見て、慌てて階下に降りて行き、下宿の女将に介抱を頼み、急いで神殿に行った。

神官は薬師の仕事もしている。熱冷ましの薬を処方して貰わなければ。

大事な見付けたばかりの子供が死んで仕舞うかも知れない。

神官には言い含めておかねばなるまい。万が一貴族にでも知られて、子供を奪われてしまえば大変だ。

後見人はあくまで応急処置だ。誰か有力な人の養子にして貰わない内は安心できない。

神官を連れて帰ってくるとキラは熱も下がって、峠は越しているように見えた。

「ただの風邪じゃろう、滋養のあるものを食べれば直ぐに良くなる。薬は要らんじゃろう。」

神官がそう言って、帰って行った。

セレスティンは一安心だ。キラの側へ行き、

「具合はどうだ?もう起き上がれそうか?」

「はい、心配掛けて申し訳ありませんでした。僕はもう大丈夫です。」

セレスティンは、何となくキラが先ほどとは雰囲気が変わったような気がしたが病み上がりのせいだろうと考え、気にしないことにした。


キラの養子先が決まった。

元貴族、男爵の次男で35歳の商店主。

女の子供が2人居る。15歳と12歳だ。

「我が家に生まれつきの魔法使いが養子に来てくれるなどと、素晴らしい事です。精一杯力に成ります。」

実直な正直者だ。商売の腕はそれほどではないが元貴族なのでそれなりに後ろ盾にはなるだろう。

「キラと申します。これからお世話になります。」

「キラ君、これからはキラ・ドルトンと名乗るんだよ。」

「はい。」

セレスティンはこれで自分の役目は終わったと安心した。キラはこれから魔法学園へ通うことになる。周りは殆ど貴族だが、跡継ぎになるような子供はいない。それほど疎外感はないと思いたい。

学園へ通うまでに文字を覚えて貰うために、セレスティンが教師役をしたが、驚いたことに一度教えただけで覚えてしまった。計算も教えなくても出来ていた。不思議な感じはしたが、魔法使いの素質があると言うことはそんなことにも素質があるのだろうと思い深くは考えないことにした。

始め会ったときより、大人びた雰囲気なのは緊張のせいだろうと考えた。





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