幼青年
ふと目が覚める。薄く目を開ける。だんだんと小鳥の囀りがうるさく聞こえる。
今日も青年は来てほしくない平日を迎える。
「さっきまでいた世界は何処なのか?」
目が覚める一秒前に見た景色と、違くて一瞬戸惑う。
だが、だんだんと頭が冴えるにつれいやと言うほど理解する。
「ああ、これは現実か」
さっきまで当たり前だったことは幻。
今映ってるのが現実。
青年はため息をつきながら、いつもの支度を始める。そうしてそれから数十分して、いつも同じことを思いながらドアを開ける。
「もう少し夢の続きをみたかった。」
朝陽が私の顔を見つめながら眩い光を放ってくる。
私を嫌っている様にいやらしく照らしてくる。
青年はいつもの路地でいつもの場所にいつもの時間に行っていつもの様に過ごす。
この変わり映えのない生活に飽き飽きしていた。
だからといって、青年は日常の変化を望まないらしい。
今日だって寄り道もせずいつもの生活をした。冬の日も、
星が見える日も、
秋の紅葉が街を彩ろうとも、
青年に大きな変化は起きなかった。青年はただただうんざりしているだけだった。
そして青年は大人になった。
そんなある日。
鏡を見てようやく気づいた。こう見えて容姿にはそれなりに気を遣っているつもりだった。だが老けている自分を見て気づきと共に焦った。
「私はただただ歳をとっているだけだ」と。
「変わり映えのない日常、人間関係、私はあの時と何もかも一緒なのか?」
そしてようやく青年の頃から動かなかった腰を上げた。
だが腰が重くてあまり思った様に足が動かない。腰も痛い。視力もメガネをかけないと見えない。
そこで老人は気づいた。
「ああ、いつからこの腰はこんなにも重くなったのだろうか。青年の時はいつでも躊躇なく腰を上げられた。長く走ることもできた。目もよく見えた。」
老人は考えなしに闇雲に外に出た。
自己嫌悪がすごい。
自分に虫唾が走る。
やがて足音が速くなる。
それにも気づかない。
だが体は正直だ。
老人は疲れて息を切らしながら近くにあった公園のベンチに座って空を仰ぎ見た。
朝陽が私の顔を見つめながら眩い光を放ってくる。
青年は老人になってようやく気づいた。
「ああ、太陽を嫌っていたのは私だったんだな。」
思えばいつからだろう。小鳥の囀りがうるさく聞こえる様になったのは。でももうそんな囀りも何も感じ無くなってしまった。
毎日ため息をつきながらドアへ向かうことも無くなっていた。
そう。老人は枯れてしまったのだ。
花は、一生懸命に太陽にあたろうと背を伸ばす。
「私は背を伸ばさずただただいつかは太陽があたるだろうと待っていただけだったのだ。」
もう時期枯れそうな花が背の高い花々に囲まれて思う。太陽を見て思う。
やがて陽は落ち、月が出る。星が出る。
今日は快晴の様で星がよく見える様だ。
「ああ月が綺麗だ。」
枯れそうな花はようやく輝きを見つけた。
だが生命の灯火はもう消え掛かっていた。
そうして老人は目を瞑る。
「これが夢だったらいいのに。」