03:起動するゴリメタルマークワン
「ちっ! 効かねえか!」
ビッグボアの毛皮は硬く、拳銃の弾丸をも弾いてしまう。
「グルルルル!」
「だがこちらに注意は引けたな・・・・」
銃弾を受けたビッグボアは、不機嫌そうに唸り声を上げ、少女からこちらに向きを変えた。
現在オレは森の木の枝の上にいる。
そして幼い少女を襲おうとしていた、ビッグボアを見付け、数発拳銃を発砲したのだ。
「ブギィィィィ~!!」
ドドドドドド・・・・! ズドーン!!
「うお! すごい衝撃!」
ビッグボアはオレのいた木に突撃し激突する。
木はその衝撃で、ぐらぐらと揺れている。
オレはその刹那、他の木の枝に飛び移った。
パパパン!
「こっちや!」
「ブギィ!!」
今一度拳銃を発砲し、ビッグボアの注意を引き付ける。
「とう!」
その直後少女のいる場所に降り立つ。
「無事か!? 怪我はないか!?」
そしてオレは少女に声をかけた。
「アルカル・・・マケタ・・・・」
「ちっ! 言葉が通じねえのか!?」
すると少女は聞きなれない言語を口にした。
『共通魔族言語を習得しました』
すると妙なメッセージがスマホに表示された。
「なんや? 共通魔族言語やと?」
「・・・・足がすくんで動けない・・・・」
「急に言葉がわかるようになったな・・・。言語習得とやらの影響か?」
どうやらこのゲームは、聞いた言語を習得する仕様のようだ。
ハイテクだが面倒くさい仕様だ。
もうそれ全部共通言語でいいだろ・・・・。
そしてスキル欄に、共通魔族言語が加わる。
「それよりお前その角・・・・」
「ヒマ・・・オーガ族だから・・・」
見ると少女の頭には、二本の小さな角が生えていた。
どうやら少女は、オーガ族のようだ。
オーガとは異世界物のラノベやゲームに登場する鬼の魔物だ。
まあだからと言って、こんな幼い少女を、このまま放置はできないがな。
「グルルル・・・」
ビッグボアはオレのいた木に激突すると、今度はこちらに向き直る。
「いかん! 今は気にしている場合じゃない! アースウォール!!」
ドドド~ン!
オレはビッグボアの突撃を防ぐために、アースウォールの魔法で岩の壁を出現させた。
ズドーン! バコーン!
ビックボアが衝突するたびに、岩の壁に亀裂が入る。
「このままでは破壊されてまう! はよ逃げるで!」
「足がすくんで・・・・」
「ちっ! このままじゃあかんな・・・・。どうする?」
オレはオーガ娘の手を引くが、いっこうに動く気配はない。
幼いオーガ娘は足がすくんで動けないようだ。
オーガ娘は1m程の身長だが、それでもオレの二倍くらいは大きい。
オレが引っ張って逃げるには、大きすぎるのだ。
オレは何か他に方法がないか思案する。
「そうや! あれがある! ゴーレム出てこい!」
オレは何か思いつくと、アイテムボックスからゴーレムを出した。
ゴーレムは鈍重で逃走には向かないが、力仕事には最適なのだ。
「ゴリメタルマークワン出ろ!」
続けてゴリメタルマークワンを出した。
「ゴーレム! その少女をゴリメタルマークワンの中へ・・・!」
オレはゴリメタルマークワンのハッチを開けると、ゴーレムにオーガ娘を抱きかかえさせ、その中に入れさせた。
ゴリメタルマークワンのボディーは、重厚な鋼鉄で出来ている。
例え動かなくても、その重厚な鎧であれば、ビッグボアの突撃にも、耐えるだろうと考えたのだ。
バカーン! バラバラ・・・・!
「あか~ん! 岩の壁が破壊されてもうた!」
その時突撃に耐えられなくなった岩の壁が、破壊されて崩落する。
『・・・・出力条件をクリアーしました。ゴリメタルマークワンを起動します・・・・』
「はあ?」
その時オレのスマホに、そんなメッセージが出て来た。
「出力条件クリアーやと? 確か出力条件はMAGが160以上やったな・・・・」
その条件をクリアーしたということは、ゴリメタルマークワンの中にいるオーガ娘のMAGが、160以上ということになる。
標準を超える聖獣であるオレのMAGを、さらに超えるオーガ娘って・・・・いったい何者だろうか?
そんなことよりもゴリメタルマークワンが起動したなら、勝利の活路は見いだせるかもしれない。
「おいオーガの娘! そのまま姿勢を低くして両手を前に突き出せ!」
「なに? こう?」
ゴリメタルマークワンの中にいるオーガ娘は、オレに言われるがままに低い姿勢となり、両手を前に出す。
まるで組み合う前のレスラーのような姿勢だ。
するとゴリメタルマークワンも腰を落として、両手を前に出し、レスラーのような姿勢となる。
ゴリメタルマークワンは、中にいる操作する人間の体の動きに合わせて動くのだ。
「ブギィィィィィ!」
それを挑発ととらえたのか、ビッグボアは激高しながら突撃してきた。
ガ~ン!!
「受け止めた!?」
「おおお~!」
ゴリメタルマークワンが、ビッグボアの強烈な突撃を受け止める。
さすがにビッグボアの強力な突撃でも、ゴリメタルマークワンの鋼鉄の体を、吹き飛ばすことは出来ないようだ。
ゴリメタルマークワンに受け止められたビッグボアは、反動で後ろ足が浮き上がる。
「いいぞ娘! そのまま反動で持ち上げたれ!」
「あい!」
オーガ娘がビッグボアを持ち上げると、そのままブレーンバスターのような大勢になる。
「ブギ! ブギィィィ!」
ビッグボアは逃れようと足をばたつかせるが、こうなっては逃れる術はない。
「そのまま落としたれえええ!」
「あい!」
「ブギィィィィィ・・・・!」
そのままビッグボアは地面へ向けて落下を始める。
ズバアアアン!!
そして鼻を地面に強打し、ぴくぴくと痙攣して、やがて動かなくなった。
「オレたちの勝利だああああ!」
「ヒマ・・・ボアやっつけた・・・・?」
オレはゴリメタルマークワンの肩に飛び乗ると、勝ちどきを上げた。
オーガ娘はゴリメタルマークワンの中で、放心状態となっている。
「お前・・・ヒマっていうのか?」
オレはオーガ娘に名前を尋ねる。
「ヒマの名前・・・ヒマーリャン・・・」
「なるほど・・・・。ヒマーリャンでヒマか・・・・」
どうやら彼女の名前は、ヒマーリャンと言うようだ。
「オレは熊太郎だ! よろしくなヒマ!」
「クマ・・・? うん! よろしくクマ!」
「よっしゃあ! ここじゃあモンスターがいて危険だ! 安全なチュートリアルフィールドへ案内するから、そのままゴリメタルマークワンで移動するぞ!」
「あい!」
ヒマの操縦するゴリメタルマークワンが、オレを肩に乗せて、さっそうと走り始めた。
こうしてオレはヒマを案内し、安全なチュートリアルフィールドへと、舞い戻ることになったのだ。
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