10:イーパエクス(イーパ7式改エクスプロード)
「ゴリメタルならまだ謁見の間にあるよ! ついでにあの重い大斧もあそこにあるから!」
牢屋から抜け出したオレたちは、謁見の間に、まだゴリメタルとエマのハルバートがあると、アーシアから聞き、そちらに向かった。
「エリザベス! そっちはどう?」
「駄目よ! この魔法陣はどうにもならない!」
謁見の間に到着すると、そこにはエリザベスがおり、なにやら魔法陣を調べている様子だった。
「クマ! ゴリメタル!」
「わたくしのハルバートもあそこにあります!」
見るとゴリメタルとエマのハルバートは、その魔法陣の中心に置いてあったのだ。
あの魔法陣はたしか、魔法を使用不能にする魔法陣だ。
青光りしていることから、まだ作動しているらしい。
確か魔法陣はどこか一つでも削ると、作動しなくなると、どこかのラノベで聞いたことがある。
ならあれが役に立つのではないだろうか?
「オレに任せろ! その魔法陣・・・使いものにならなくしてやる!」
オレは狂暴な笑顔を浮かべ、そう口を開いた。
「どうするのクマちゃん!?」
ドドド~ン!
「こいつを使う!!」
オレがアイテムボックスから出したのは、イーパ7式いや・・・・。
「こいつの名はイーパ7式改エクスプロードや! 略してイーパエクスってとこやな!」
それは赤く塗られ、やせ細ったイーパ7式だった。
その見た目はまるで、赤いなんちゃらの専用機のようだ。
「すごい! クマちゃんあのイーパ7式を改造しちゃったの!?」
「改造じゃあらへん! コツコツとパーツから真似て造って組み立てた、新品のイーパや!」
このイーパエクスは、暇な時間を見付け、コツコツと造ってきた力作なのだ。
防御面はイーパ7式と変わりないが、そのゴツゴツした見た目を改善することで、スピードが飛躍的にアップしているのだ。
「それが本当ならクマさんの技術は、あのセグメト王国の技師を、大きく上回っているかもしれませんね」
「本当だよ! 天才だよクマちゃん!」
「クマは天才!」「さすがクマさま!」
「がはは! そんなこと・・・・あるよ!」
「「・・・・」」
オレが調子に乗ってのたまうと、皆しらけた表情になった。
どうやらその手のギャグは、通用しないらしい。
「こいつには新兵器も搭載してあるんや!」
気を取り直したオレは、新兵器を使うために、さっそくその赤い専用機に乗り込んだ。
「皆イーパエクスの後ろにまわれ!」
「なにをする気クマちゃん!?」
「今からその新兵器をぶっぱなす!」
全員がイーパエクスの後ろに隠れると、オレはイーパエクスの右腕を、前に突き出した。
「・・・・・起動!!」
そして魔法陣に向けて、新兵器を起動したのだ。
ズドドド~ン!!
すると魔法陣の一部が爆炎を上げ、床の魔法陣が、砂煙と共に大きくえぐれる。
「何今の・・・?」
「言うたやろ? この機体はイーパ7式改エクスプロードやて。その名の通りこの機体は、魔力によって爆弾を放てるんや」
イーパ7式改エクスプロード、略してイーパエクスは、ただ身軽なだけでなく、爆弾を放てる機体なのだ。
しかも搭乗者の魔力があるだけ放てるので、積載量も少なく済み、場合によってはその弾数もかなりのものとなる。
そして魔法陣の青い光は消え失せた。
どうやらこの魔法陣も、どこかが欠けることで、作動しなくなるタイプのようだ。
「今だヒマ! ゴリメタルに乗り込め!」
「あい!」
「エマもハルバートを・・・!」
「はい!!」
「ぐずぐずしていると王宮の兵士が今の音で駆けつけてくるぞ!」
オレは今の爆発で、唖然と立ち尽くしていた二人に、そう声を掛けた。
今の爆発は王宮中に響いただろう。
ならば大勢の兵士が駆け付けてくることだろう。
まあゴリメタルとこのイーパエクスがあれば、そんな兵士がいくらいようが、敵ではないがな。
「おかしいですね・・・・。あれだけ派手な爆発だったのに、誰も駆けつけてきませんね・・・・?」
しかしその場に兵士一人、駆けつけてくる気配はなかった。
「見てクマちゃん! 窓の外!」
すると窓の外の様子を見ていたアーシアが、慌てた様子で声をかけて来た。
何かが窓の外に、いるというのだろうか?
「クマ! 樽みたいなのが沢山いるよ!」
「なんだと!?」
窓から外の様子を見ると、そこにには樽のような黒い大きな影が、いくつも立ち尽くしていたのだ。
「あれはイーパ・・・? いや・・・別の機体か?」
その黒い樽のようなものには、手足があり、どうやらイーパ7式と似たような機体であるようだった。
「あれは王国のデンジャーです! まさか完成していたなんて!?」
どうやらデンジャーという機体は、長い間未完成で放置されていた機体のようだ。
それが完成していたのだろう。
「はははは! 君たちには礼を言うよ! あのゴリメタルの動力を参考に、このデンジャー初号機を、完成させることができたのだから!」
その時そう言い放ったのは、あの時謁見の間にいた、魔術師らしき髭面のおやじだった。
そのおやじはデンジャーの一番奥の機体の側にいて、そこから拡声器のようなもので、こちらに声を掛けていた。
どうやらデンジャー初号機は、この日完成したようだ。
「ちなみにここいらはすでに、20機あまりのデンジャー初号機に包囲されている!」
この建物の周囲には、どれも窓ガラスが見える。
つまりこの建物は、謁見の間だけある、独立した棟なのだ。
こいつらは初めからこうするために、周到に用意していたのだろう。
ゴリメタルをあのデンジャー初号機の、最初の生贄にするつもりだったのだ。
だがオレたちのやることは変わらない。
あのデンジャー初号機は20機ばかりいるようだが、数さえいればいいと言うものではない。
「もう挨拶はすんだなおやじ? それでは破壊させてもらうぜ・・・・そのデンジャーとやらをな!」
オレは狂暴な笑顔で、そうそのおやじに言い放った。
同時にゴリメタルと、ハルバートをかついだエマが、イーパエクスの後ろから飛び出していくのが見えた。
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