01:《プロローグ》~辞表と後輩の田中
「ちょっとクマさん! 会社辞めるって本当っすか!?」
オレはその日会社に辞表を提出し、デスクの上にある荷物をまとめていた。
そんな時この後輩の田中は、オレに詰めかけてきたのだ。
「おう! 世話になったな田中!」
オレはそんな田中に、そう気さくに返した。
「クマさん! まじで【クマさんの伝説】なんかのために、会社辞めちゃうんですか!?」
「聖獣の伝説な?」
オレはそんな後輩の言い間違いを指摘する。
だがこいつはからかい半分に、あの【聖獣の伝説】のことを、【クマさんの伝説】とよんでいるので、それもわざとなのだろう。
この田中竜司は、唯一あのゲームの存在を、知る者の一人なのである。
こいつはオレのネトゲ仲間でもあるからな。
まあ田中はまだあのゲームについては、半信半疑な部分があるらしい。
なぜならこいつには、あの【聖獣の伝説】にログインすることが、出来なかったからだ。
試しにこのゲームを、インストールさせてみたが、そのインストールすらできない始末だ。
やはりこの【聖獣の伝説】は、何かいわくつきの、ゲームなのかもしれない。
オレがアイテムボックスに物を取り込んで消したり、向こうで手に入れた物を見せると、ちょっと信じたような感じだったがな。
ちなみにオレがゲームを、プレイしている間を見てもらったところ、オレは時間が止まったように、動かなくなったらしい。
何それ怖い・・・・
「てことで田中! 後会社の仕事のことは任せたで!」
「ちょ~クマさん!!」
オレは心配そうな表情の田中をよそに、手を振りながら、軽快に会社を後にした。
まあ田中にはこれから、ゲームのことを色々と、手伝ってもらう可能性はあるがな。
オレがこの会社を辞める決意をした理由は、あのゲームだけで、結構稼げることがわかったからだ。
今のところ三ヶ月でだいたい200万円程の稼ぎだが、会社の給料に比べればかなり良い。
それに大好きなゲームで、楽しみながら稼げるなんて、まるで夢のようである。
チュートリアルフィールドだけでこれなら、冒険に出た後はもっと稼げる可能性がある。
この先はもっと期待できそうだ。
そしてこれから引っ越しやらで忙しくなる。
今までのマンションの部屋も良かったが、会社勤めという信用がなくなると、この部屋を借りるのが難しくなるのだ。
そこで今までの部屋を引き払い、格安の1LDKマンションに、引っ越すことに決めたというわけだ。
引っ越しはアイテムボックスに、荷物を移動するだけだから、とても簡単だった。
このアイテムボックスを使えば、運送業者なんかも出来そうだが、できるだけゲームで遊びたいので、それは遠慮しておくことにする。
次の部屋は狭い部屋ではあるが、スマホゲームで遊ぶには全く問題はない。
ちなみに【聖獣の伝説】プレイ中は、留守中ということにするつもりだ。
【聖獣の伝説】プレイ中は、何も音が耳に、入ってこないからな。
後は水分補給や食事を、定期的にとることを忘れないようにしないとな。
脱水症や低糖症は危険だからな。
気付いたら死んでたなんて、シャレにならん。
「よっしゃあ! 引っ越しはだいたいこんなもんや! はよゲームやろ!」
その日引っ越しの準備を粗方終えたオレは、再び【聖獣の伝説】にダイブするのであった。
これからチュートリアルフィールドを出て、本格的に大冒険だ。
いったいどんな冒険になるか、とても楽しみだ。
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