01:【プロローグ】~デンジャーラ・ガレーラッツェ国王
第三者視点~
「それではゼフリン・・・・。お前は儂に騎士か魔術師を貸せと言うのだな?」
そう言って王座に座る、肥え太った男は、口ひげをいじりつつ、偉そうにゼフリンを見下ろした。
その男こそガレーラッツェ王国国王、デンジャーラ・ガレーラッツェであった。
「仰せの通りでございます。セグメト王国はいつこの国に攻め込んでくるか、わからぬ状態でございます。その最初の標的が我が領、エオセーヌ領であることは間違いないでしょう」
ゼフリン伯爵の統治する、エオセーヌ領はセグメト王国と接しており、現在色々ときな臭い噂のあるセグメト王国は、いつ攻め込んできてもおかしくはないと思われた。
そのためゼフリン伯爵は、国王との謁見にて、助力を願い出たのだ。
とくにこのガレーラッツェ王国で力を持つのは、騎士や魔術師であり、あのセグメト王国のアイアンゴーレムに対抗するためには、ぜひとも欲しい人材であった。
そこでゼフリン伯爵は、デンジャーラ国王にセグメト王国のアイアンゴーレムの、脅威についても説明した。
「ほう? 冒険者が操って見せたのか? そのアイアンゴーレムを? しかもそのアイアンゴーレムを仕留めたのもその冒険者であったと?」
「はい・・・・。無名の冒険者パーティーではありますが、まあ・・・・実力だけは確かです」
ゼフリン伯爵は助成は必要だったが、その冒険者については、デンジャーラ国王に知られたくなかった。
それはこの欲深なデンジャーラ国王に、あの風変わりな聖獣を、会わせたくなかったからに他ならない。
だから出来るだけ彼らについては、伏せるつもりでいた。
だが状況はそう上手くはいかなかった。
側近の者がデンジャーラ国王に何か耳打ちすると、デンジャーラ国王の口角が上がる。
どうやらその側近には、彼らについての情報が、漏れていたようだ。
大方使用人の中にスパイでも、紛れ込ませていたのだろうと、ゼフリン伯爵は勘ぐる。
「その冒険者に会ってみたくなったぞ」
そしてにやけ顔で、デンジャーラ国王はそう口にしたのだ。
王の口にしたことは命令にも近い。
側近はただちに王の意向を果たすために動き出すだろう。
その前になんとかせねばと、ゼフリン伯爵は口を挟む。
「し、しかし国王! 相手は粗暴な冒険者でして・・・」
「貴様なら冒険者の躾などいくらでもできよう。儂が助成するかどうかは・・・それからだ」
「は、はあ・・・」
そう言われてはゼフリン伯爵も、何も言い返すことが出来なかった。
こうなれば出来るだけ、悪い方向に行かないように、立ちまわる他ないとゼフリン伯爵は、頭を巡らせるのだった。
この一ヶ月後、ゼフリン伯爵の屋敷に、国王からの使者が、やってくることになるのだ。
熊太郎視点~
「やい貴様! なぜ結城の後を追わなかった!?」
オレが依頼をこなすために、旅立つユーキを見送った話をすると、藤田会長がそんなことを言って来た。
その日の昼過ぎに、田中と護衛の黒服に連れられて、藤田会長がオレの部屋に尋ねて来たのだ。
その時にユーキの話を聞かれ、事情を話したのが事の発端だ。
田中はそのもめ事に巻き込まれまいと、我関せぬ様子で、デスクワークならぬ、座卓ワークに徹していた。
「勘弁してくださいよ会長! オレやて色々用事があるんです!」
報酬はあれから受け取ってはいないし、オレがユーキについていく義理もない。
それに狩りや依頼で稼がないと、オレやヒマ、エマの生活にも影響しかねない。
「それに国王から招集がかかっているんです。行かないとどうなるかわかりません」
数日前にオレたちの前に、国王からの招集を知らせる、使者が来ていた。
オレたちはその国王の招集に従い、王都に行かなければならないのだ。
「なに!? 貴様どんな悪さをして呼びつけられた!? 貴様が処刑でもされていなくなれば、結城と私をつなぐ者が、いなくなってしまうではないか!」
「初めから悪いことと決めつけんでください! 謁見に行くだけです!」
もしオレが何か悪いことをして、連行されるなら、牢屋に入れられて運ばれるはずだ。
ところが今回迎えにきた使者は、明らかに友好的な感じだ。
あれでいきなり引っ付構えて、連行し始めるとか、ありえない話だ。
そして謁見の理由についても、ゼフリン伯爵からすでに聞いているのだ。
なんでもゼフリン伯爵が、国王に騎士または魔術師による、応援要請を頼んだようだ。
それはセグメト王国が、ゼフリン伯爵の統治する、エオセーヌ領に攻め込んでくる可能性があったからだ。
その時にセグメト王国の物と思われる、アイアンゴーレムを倒した冒険者パーティーの名前を聞かれ、答えずにはいられなかったという。
そこでぜひ国王が、会ってみたいと言い出し、オレたちに招集命令が出たのだようだ。
最悪聖獣の名前を使い、すっぽかすことも出来たかもしれないが、報奨なども出るそうなので、これは悪い話ではないと思ったのだ。
「くそぉ! いっそ私がそのゲームに入れたなら・・・・」
すると藤田会長が、そんなことを言いだした。
その藤田会長の言葉・・・・何かのフラグにならんやろな?
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