05:クエストを確認してみた
「勇者ユーキにコーラを届ける?」
それがオレの最初のクエストだった。
コーラと言えばあの、黒くて甘いシュワシュワする飲み物だ。
だがそもそもこの世界におけるコーラとは何だろうか?
それがオレのイメージする、あのコーラとは似てもつかない何かの場合もあうだろう。
そして入手手段として考えられるのは、店での購入、ドロップアイテム、何かのクエストの報酬、素材の合成といったところだろう。
また勇者ユーキが、どこにいるかもわからない。
いずれにせよ【勇者ユーキ】と【コーラ】についての、情報を集める必要があるだろう。
ゲームでの情報収集手段と言えば、人に尋ねまくることだ。
まずはこのチュートリアルフィールドにいる、3人の妖精に尋ねてみるのが良いだろう。
「勇者ユーキってどこにおるん?」
オレはまず勇者ユーキについて、尋ねてみることにする。
「ユーキは異世界から召喚された勇者だよ!」
「女神様のお気に入り!」
「ユーキはとても強い!」
どうやら勇者ユーキとは、召喚勇者という設定のNPCのようだ。
名前からして男なのか、女なのかよくわからないが・・・・。
「ユーキは今どこにいたかしら?」
「わからない・・・・」
「街か村で聞けばいい」
ところが勇者ユーキの居場所については、妖精たちは知らないようだ。
とりあえずこのチュートリアルフィールドを出て、街か村で聞いてみる他ないだろう。
「コーラとはどんなアイテムだ? そしてどこにあるんだ?」
オレはコーラについても、妖精たちに尋ねてみた。
「コーラってなに?」
「この世界にはないアイテムかも?」
「きっと向こうの世界にあるんだよ!」
向こうの世界?
【向こうの世界】ってどこのことだ?
「そうよアイテム検索がある!」
「アイテム名をタップして検索するといい!」
「そうねアイテム検索でわかるわね!」
「なるほど・・・アイテム検索か・・・・」
どうやらアイテム名をタップすることで、そのアイテムについて検索できるようだ。
オレはさっそく【コーラ】の文字をタップしてみた。
『【コーラ】~向こうの世界のアイテム。コンビニなどのお店か自動販売機で購入可能』
【向こうの世界】・・・・また出て来た・・・・。
「【向こうの世界】ってどこのことや?」
オレはその【向こうの世界】について、妖精たちに尋ねてみた。
「【向こうの世界】はここと違う世界」
「特定の聖獣しか行けない世界」
「ログアウトした後の世界」
なんですと!?
ログアウトした後の世界やと!?
するってえと・・・・現実世界のことかいな?
このゲームが特殊なゲームであることは確かだ。
非現実的なこのリアルな体感が、それを物語っている。
なら現実世界の物を持ち込むことが、もしかしたら出来るのか?
「妙なこと言うな? 現実世界の物なんかゲームの中に持ちこめんやろが?」
オレは恐る恐るその真相を妖精たちに尋ねた。
「できるよね!」
「できるできる!」
「【向こうの世界】でアイテムを入手すれば、この世界に持ち込める!」
嘘やろ・・・・そんな話・・・・。
とりあえず確かめてみるしかないな。
オレはとりあえずログアウトして、その真相を確かめてみることにした。
ログアウトすると目の前には座卓があり、その上にはいつも飲んでいる、ペットボトルの緑茶やポテチがあった。
スマホを確認すると、そこにはまだステータス画面が映し出されていて、項目の中に【サーチ】の文字も見て取れた。
【サーチ】はアイテムを調べたり、入手したりできる項目だ。
オレが【サーチ】をタップすると、スマホがカメラ画面となり、ゲーム内で見た【サーチ】の画面となった。
見るとそこにはアイテムを入手するための、【ゲット】の文字も見て取れた。
「このお茶で試して見るか・・・・」
オレは緑茶をスマホのカメラ画面に映し出すと、徐に【ゲット】の文字をタップしたのだ。
『緑茶を入手しました』
「おう!? 嘘やろ!?」
するとなんと緑茶が座卓の上から消え、アイテムボックスに緑茶が追加されたのだ。
オレはその光景が信じることができず、何度も緑茶をアイテムボックスから出したり、再びゲットしたりを繰り返した。
だが何度繰り返しても、緑茶は同じように、アイテムボックスと座卓の上を行き来した。
「このゲーム異常や・・・・」
オレはその時初めて、この【聖獣の伝説】というゲームの、異常性を目の当たりにした。
だが同時にその有用性にも気付いたのだ。
現在オレの座卓の上には、ゲーム内で入手した、ドラゴンフライの死骸が置いてある。
その死骸はとてもリアルで、本物の虫の死骸にしか見えない。
オレは試しにゲーム内の物が、出せないか試してみたのだ。
そこで座卓の上に、ゲーム内で倒した、ドラゴンフライの死骸を、出して見ることにしたのだ。
すると見事座卓の上には、ドラゴンフライの巨大な虫の死骸が、出現したというわけだ。
「このドラゴンフライの死骸・・・・オークションで高く売れるかもな・・・・」
この巨大なドラゴンフライの死骸は、オークションなどに出せば、高額で売れる可能性もある。
それになによりこのゲーム内で金貨を入手すれば、換金できる可能性もあるのだ。
「こっちで買ったもんをゲーム内で売れば儲けになるかも・・・・!?」
もしかしたら現実世界で購入した物を、ゲーム内で販売すれば、かなり儲けられるのではないだろうか?
反対にゲーム内の物でも、リアル世界で売れるかもしれない。
「まあその前に本当にゲーム内でこっちの物が出せるか確認せんとな・・・・」
オレはそれを確認するために、再びゲームにログインした。
「ごらぁああ! オレの緑茶ああああ!!」
そして起こった惨状が、目の前の様子である。
空中に緑色の液体が浮遊し、それに沢山の妖精が群がっているのだ。
その緑の液体とは、妖精たちが空中に浮かべたオレの緑茶だ。
オレが緑茶を飲んで確認しようとしたところ、3人の妖精がそれを珍しがり、ペットボトルの中の緑茶を浮遊させ、外に出してしまったのだ。
それを珍しがってどこからともなく、見え覚えのない妖精が無数に現れ、群がって飲み始めたのだ。
どうやら妖精はあの3人以外にも、そこらに無数にいたようだ。
「苦いけど美味しいわ!」
「珍しい水ね!」「私にも飲ませて~!」
オレの緑茶は瞬く間に、妖精たちに飲みつくされ、なくなっていった。
オレはただ涙目で、その様子を見守る他なかった。
こりゃあ食べ物や飲み物を、不用意にこいつらの前で、出さない方がいいだろうな・・・・。
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