08:ゼフリン伯爵 vs イーパ7式
「それでは・・・・開始です!」
執事のラバスの合図で、その模擬戦は開始された。
「クマがんばれ!」
「クマさましっかり!」
模擬戦が開始すると、オレに向けての、ヒマとエマの声援が飛ぶ。
今回イーパ7式は巨大な剣の装備を、外されている。
さすがに部位欠損程の大怪我が出てしまうと、治せるかどうかわからないからだそうだ。
そのためイーパ7式の装備は、巨大な盾のみだ。
一方ゼフリン伯爵も騎士二人も、身体強化も武器強化も使えるそうだ。
その強さが未知数のために、油断することもできない。
ゼフリン伯爵が剣を片手に、一気にイーパ7式との距離を詰める。
「ふうう~ん!!」
ガキ~ン!!
ゼフリン伯爵の一撃が、イーパ7式の足に当たるが、イーパ7式は揺らぐ気配もない。
イーパ7式の装甲は、通常の鎧の数倍の分厚さがある。
その上衝撃に強くなる、工夫も施されているのだ。
例え身体強化と武器強化を使っていようが、簡単にダメージが通るものでもない。
エマがハルバートで何度も殴って、ダメージを通していたが、あれは規格外の身体強化でこそなせる業なのだ。
「ちっ! これほどの強化でゆらぎもせぬか! お前たちも攻撃に加われ!」
「「はい!」」
冒険者ギルドマスターのローマンの連撃で、こいつより重量のある、ゴリメタルが揺らぐのを見ている。
さすがに身体強化と武器強化を掛けた、三人がかりの攻撃を受ければ、よろけぐらいはするかもしれないな。
そこからいっきに、畳みかけられる可能性もあるか・・・?
「おらあああ!!」
ガチャ~ン!!
オレは大盾を前に構えさせ、緊急操作で、瞬時にイーパ7式を前進させた。
ドカドカ!!
「「うわああああ!!」」
すると突撃した二人の騎士が、突然のイーパ7式の行動に対応しきれず、跳ね飛ばされる。
「マーキュリー! ベス!」
「二人とも騎士ぞ! あれしきでどうこうなる者たちではない!」
心配したフローラ嬢が二人の騎士の名を叫ぶが、ゼフリン伯爵の言うには、どうやら心配はいらないようだ。
その言葉に呼応するように、倒れた二人の騎士は立ち上がった。
気付くとイーパ7式は、三人に周囲を囲まれていた。
立ち位置的には後ろにゼフリン伯爵、左右前方に騎士二人だ。
「囲んだぞ! いっきに叩き伏せろ!」
「「はい!!」」
ゼフリン伯爵の合図とともに、三人がいっきにイーパ7式に斬りかかる。
ガガキ~ン!!
三人の剣が、同時にイーパ7式の各所に命中した。
少しゆらいだか!? だがこいつらもこれで無防備だ!
「おらああああ!!!」
「「ぐあああああ!!」」
オレは低姿勢でいっきに腕を振り回し、三人を跳ね飛ばした。
三人の実力はあのローマン程ではないにしろ、それなりにはあるようだ。
三人がかりとはいえ、この巨体をゆらすことが出来たのだから。
だがさらに重量のあるゴリメタルには、あの実力では、まったく通用しないだろう。
すると木剣でゴリメタルを、ふらつかせたローマンは、かなりの実力ということになる。
Aランク冒険者も伊達ではないと、いうことだろう。
「どうするゼフリン伯爵さまよう!? まだやるか!?」
オレは再び起き上がろうとするゼフリン伯爵に、そう声を掛けた。
どうやらあれ程の攻撃を受けて、まだピンピンしているようだ。
それも身体強化のおかげか?
「いや・・・・。ここまでとしよう」
だがゼフリン伯爵は、これでこの模擬戦を終了するようだ。
模擬戦が終わると、オレはイーパ7式を降りて、そのダメージを確認した。
「うわ~・・・・。けっこう攻撃が通とったんやな・・・・」
見るとイーパ7式の各所に、切り傷が付いていた。
深い傷ではないが、改めて武器強化や身体強化の脅威を、目の当たりにする。
「当然だ・・・・。私はこれでも元王国の騎士だからな・・・・。だがそれでもこれが実戦であれば、死亡していたかもしれん・・・・」
ゼフリン伯爵はイーパ7式を見上げながらそう言った。
「このアイアンゴーレムは騎士が数人がかりでも、倒すのは難しいだろうな。それにそれ程の装甲ならば、魔法も通りにくかろう・・・・」
ゼフリン伯爵は、何やら難しい顔をしながら、そう付け加えた。
いったいゼフリン伯爵は、何の目的で、こいつの脅威を知ろうとしたのだろうか?
「クマ公はこのアイアンゴーレムを修理したと聞くが、もしかして造ることも可能なのか?」
「さあ・・・・どうだったかな・・・・?」
イーパ7式の構造は、すでに魔力を流しつつ、その内部を確認することで把握済みだ。
またその時にスマホの画像ファイルに、設計図も記録してある。
鉄さえあれば、その設計図を見ながら、造れないことはないだろう。
だがうかつにイーパ7式を、造れるという発言は、しない方がいいだろう。
そんな発言をすれば、何をやらされるか、わかったものじゃない。
だがゼフリン伯爵の言葉に、返事を濁したは良いが、貴族相手にポーカーフェイスを貫けるような自信はオレにはない。
ゼフリン伯爵の表情からは、何も察することはできないが、オレの態度から、見破られている可能性もある。
オレは緊張の面持ちで、次にゼフリン伯爵が、紡ぐ言葉を待つ。
「まあいいだろう・・・・」
どうやらゼフリン伯爵は、オレがイーパ7式を造れるかどうかに対して、言及するつもりはないようだ。
そのゼフリン伯爵の言葉に、ひとまず安心する。
「それでは・・・・報告に上がっている、盗賊のアイアンゴーレムを倒したという、君らのアイアンゴーレムも見せてくれるかな?」
盗賊のアイアンゴーレム、イーパ7式を倒したアイアンゴーレムといえば、ゴリメタルマークワンしかない。
つまりそれは、ゴリメタルマークワンを見せろということだろう。
まあ報告に上がっている以上、領主であるゼフリン伯爵に、ゴリメタルマークワンを見せないわけにもいかないだろう。
「ああいいぜ・・・・」
オレは渋々ゴリメタルマークワンを、アイテムボックスから取り出した。
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